【ネタバレあり感想】
ここからは、ネタバレを含めたレビューをしていきます!
デンジとマキマの映画デート
1期のラストでも登場した「幼少期デンジの夢」から始まる冒頭。
ハッと目を覚ましたら、そこは宴の後の早川家──。1期からそのまま地続きで続いている感じがして、嬉しい演出でした。
目覚めたデンジが部屋の片付けをしているシーンも妙にジーンときます。
「デンジ、片付けを覚えたのか!」と謎の感動(笑)。きっとアキのおかげですね。
パワーちゃんは相変わらず可愛くて、ツノが4つになっても健在。どうやら血を摂りすぎたようで「血抜き」が必要とのこと。そこでデンジの新たなバディとして、マキマから紹介されるのが『サメの魔人・ビーム』です。
このビーム、1期後半にチラッと登場したときから気になっていた人も多いはず。今作では大活躍! 壁の中や地面を泳ぐように動く姿は、まるでスプラトゥーンみたいで現代的ですよね。
ビームはデンジのことを「チェンソー様」と呼んで慕っていますが、デンジは「男は嫌いだ」と拒否(笑)。でも戦闘シーンではコンビネーション抜群なんです。ナポレオンの名画を思わせるような派手なポーズで大暴れしてくれるので必見です。
(戦闘シーンについては後ほど!)
開始早々、印象的だったのはデンジとマキマの“映画デート”。
なんと1日中、夜12時まで映画をハシゴするというスケジュール! 映画好きにはたまらない時間ですよね。
しかし、話題作を観てもみんなが笑ったり泣いたりする場面でデンジは無反応。むしろ「かわいい…」とマキマの方ばかり見ています。そんなマキマも無反応。結局、二人の感想は「面白くなかったね」で一致。
逆に、評判が良くない映画のどうでもいいようなシーンでデンジが思わず涙を流してしまうんです。そしてマキマをチラ見すると、なんとマキマも泣いている…!
「マキマも泣くんだ!」という驚きと同時に、これは本当に感動していたのか? それとも何かの“技”なのか? 原作は未読ですがネタバレ情報でマキマの展開を少し知っているがゆえに、いろんな想像が膨らむ場面でした。(このあたりは原作を追わないと分からなそうですね)
どちらにせよ、この映画デートでは二人の感性が重なる瞬間が描かれていてとても良かったです。感動のポイントが同じだったり、「面白くなかったね」と気持ちを共有できるのって、すごく嬉しいことですよね。多くの人とは違う感性を持つ二人だからこそ、より際立っていました。
ちなみに、個人的にいちばん好きだったのは待ち合わせシーン。
マキマが「何時から来ていたの?」と聞くと、デンジが「眠れなくて5時に来てました!」と答えるんです。おバカで健気なデンジらしさ全開で、めちゃくちゃ可愛いシーンでした!
美少女のレゼとちょろいデンジ
マキマとのデートで「心がある」と言われて浮かれまくるデンジ。募金までしちゃうし、そのお礼にもらった花も食べてしまうほど(笑)。
そんな中、突然の雨に降られて電話ボックスへ避難。そこで出会ったのがレゼです。
レゼは屈託なく笑う美少女。
「デンジ君みたいな面白い人、はじめて」──この一言で、デンジの心をわし掴みにしてきます。
ここで際立つのは、やっぱりデンジのちょろさ。
「心はマキマさんのものなのに、体が勝手に」と言い訳しつつも、レゼが働くカフェ「二道」に通い詰めてしまうんですよね。
そうして会うたびに二人の距離はどんどん縮まっていきます。
「俺は俺のことが好きな人が好きだ」──そんなデンジのセリフも印象的でした。
言ってしまえば単純なんだけど、デンジが言うからこそ真っ直ぐに響く。ちょろいだけじゃなく、本質を突いていて、妙に納得させられるんです。
二人が親密さを深めていく夜の学校のプールシーンは、とにかく美しい。劇場の大スクリーンで観ると映えるし、「映画館で観てよかった!」と思える名シーンでした。
ただ、その美しさの中に挟まれる“蜘蛛の巣にかかった蝶”の描写が不穏。物語が進むにつれて、蝶が蜘蛛に捕食されていくんです。美しさと残酷さのギャップが、これからの展開を示唆していてゾクッとしました。
そして校舎に忍び込む、台風の悪魔とその契約者の謎の男。狙いはデンジの(チェンソーの)心臓。
ですが、その前に一人でいたレゼと遭遇します。
最初は逃げるレゼ。しかし屋上に追い詰められたその瞬間、少しだけ“本性”を見せるんです。
なんと謎の男を絞め技で瞬殺!
可憐な美少女から一転、アクロバティックに敵を仕留める美少女へ──。
このギャップ、たまらないですよね。戦闘モード全開のレゼを期待させる最高の布石でした。
プールの日から数日後、デンジとレゼはお祭りへ。
二人の関係が大きく進展する“恋愛的クライマックス”とも言える山場です。花火が夜空に上がる中、レゼから思わぬ告白が。
「仕事やめて、私と一緒に逃げない?」
レゼは、デンジの置かれている状況がおかしいと指摘します。
それに対してデンジが返したのは──
「ここで仕事続けながらレゼと会うじゃダメなの?」
このシーンに、アキやパワーを思う気持ちや、仕事に対する目標が語られていて、ジーンとさせられる場面でした。デンジの人としての成長が垣間見えるんですよね。
花火が上がる美しい背景の中、レゼが「デンジ君、私のほかに好きな人いるでしょ」と迫ったとき──。
突如、デンジの舌が食いちぎられます。
笑顔のまま舌を食いちぎるレゼ。そのホラー感に背筋が凍ります。
さらに、舌に続いて喉を斬られ、チェンソーマンに変身しようと胸のスターターロープを引こうとした瞬間──デンジの腕までもが切断されてしまうのです。
ロマンチックな空気から一気にホラーへと急転直下。
そして極めつけは、レゼの冷酷な一言。
「デンジ君の心臓、貰うね?」
ゾクッとする展開に息を呑みつつ、「この先どうなる!?」と戦闘シーンへの期待が一気に膨らみました。
戦闘
デンジの危機を救ったのは、間一髪で登場したサメの魔人・ビーム!
やっぱりこういうタイミングで現れるキャラってかっこいいですよね。忘れられがちだけど、きっとずっと近くで潜伏していたのでしょう。
猛スピードで逃げながら「なんで匂いで気づかなかった!」と焦るビーム。さらに「あの匂い、ボムだあああ!」と叫びます。
そう、レゼの正体は爆弾の悪魔の力を持つ『武器人間・ボム』。デンジと同じように悪魔と融合しており、銃の悪魔の仲間としてチェンソーの心臓を狙っていたのです。
首にあるピンを抜くと爆発し、ボムへ変身。デンジのスターターロープと同じ仕組みですね。変身したレゼは容赦なくデンジとビームに襲いかかります。
ビームのスピードも速いですが、ボムの爆破で飛ぶ勢いも凄まじい。触れたものを爆発させたり、指を鳴らして爆発を飛ばしたりと、汎用性も火力も抜群。追撃の速さに圧倒されます。
公安の施設に逃げ込んだ二人の前に再び現れるボム。レゼの姿に戻ったかと思えば、自分の首を爆破させて切断し、その頭を投げ入れるというホラー演出。投げ入れた頭部は、その場にいた人たちを巻き込んで爆発します。このシーンは背筋が凍りました。チェンソーマンのホラー描写、本当に冴え渡ってます。
戦闘シーン自体もまさにアトラクション級。爆破とビームの疾走感で、映像がぐるぐる展開していくのは通常上映でも十分迫力満点でした。
中盤では血を補給したデンジが「俺が知り合う女がさあ!!全員オレん事殺そうとしてんだけど!!」と叫ぶ名シーンも。予告で観た人も多いはずですが、やっぱり劇場で聞くと最高。デンジらしさ全開です。
ただ、戦闘力では圧倒的にボム優位。兵士のように鍛えられた戦闘技術に加え、爆破攻撃の応用力も桁違い。デンジは岸辺に鍛えられていたとはいえ、チェンソーを振り回すだけとボムに突っ込まれ、逆にアドバイスまでされる始末。結果、下半身を吹き飛ばされ再生しようとするたびに爆破され続けるという、観ていて胸が痛む展開に。
そこへ駆けつけたのがアキ。刀を使い未来視を交えた戦闘は相変わらずかっこいいですが、やはりボムには敵いません。爆破で吹っ飛ばされるアキの前に現れるのは──『暴力の魔人』。
アニメ1期で少しだけ登場したキャラですが、今作でも短いながら存在感を残していました。岸辺いわく戦闘力が相当高いとのこと。常に毒を出すマスクを被らされ、「絶対に取るな」と言われている強キャラです。個人的に気になるキャラクター上位なので、今後の活躍がめちゃくちゃ楽しみ。
ちなみに、コベニちゃんの登場は一瞬で終了(笑)。でもこちらも今後に期待です。コベニちゃんの戦闘も好きなんですよね。
後半の見どころは、デンジとビームが文字通り“一体”となって戦う姿。「俺も自分の力を応用するべきなんだ!」と閃いたのが、チェーンでビームを操作して、まるで馬のように走らせる突飛な戦法!ビームが「違う!違う!」(応用の仕方が!)と言いながらも全力で走ってくれるビームとのコンビネーションは最高でした。まさにナポレオンの有名な絵画を彷彿とさせる構図で大暴れ。
光とスピードが合わさった戦闘は迫力抜群。これ、4DXで観たら本当にアトラクション感覚でしょうね。酔いそうだけど(笑)。
チェンソーマンといえば、血生臭くて派手な戦闘シーン。今作もその魅力が余すところなく詰まっていて、最後まで圧倒されっぱなしでした。
アキと天使の悪魔
今作で一番気になっていたのが、アキの新たなバディ『天使の悪魔』。
人間に敵意を持たない特殊な悪魔で、アニメ1期の終盤にも少しだけ登場していたので、活躍を楽しみにしていました。
名前の通り羽と輪っかを持つ天使のような見た目ですが、公安の黒スーツ姿。そして顔はかわいい。ですが性別は男。
さらに、直接触れると寿命を吸い取られてしまうという危険な能力を持っています。
いつも気怠げで仕事に不真面目、怠け癖もあり、「天使である前に悪魔だよ」と言うように、その本質はやっぱり悪魔。そんなアンバランスさがとても魅力的なキャラクターです。
今作で印象的だったのは、『台風の悪魔』に吹き飛ばされそうになる天使の悪魔を、アキが素手で引き止めたシーン。
触れれば寿命を吸い取られるのに、それでも「目の前で死なれるのはもう御免だ……」と命がけで引き止めるんです。
当初はアキと天使の悪魔は折り合いが悪く、「フリでもお前とは仲良くなれないな」とアキが言えば、「らしいね」と返す程度の関係でした。
それなのに、寿命が残り2年しかないアキがさらに自分の命を削って助ける。その背景には、1期でバディだった姫野を失ったことが深く影を落としています。アキはずっと「仲間の死」を引きずっているんですよね。切ない……。
そして、この関係性が最後のシーンに繋がっていきます。
レゼを仕留める場面で、本来なら「アキ君と一緒に来て」とマキマに言われていたのに、現場に現れたのは天使の悪魔一人。
マキマは「アキ君に女の子を殺させたくなかったんだ。優しいね」と言い、天使の悪魔が返した言葉が──
「まぁ、天使ですから」
……なにこれ!?最初は「悪魔だよ」って言ってたのに!ここで「天使ですから」って!?
長いフリからのデレ、最高すぎませんか。オタク心を思いっきりくすぐられる瞬間でした(歓喜)。
田舎のネズミと都会のネズミ
今作を通して印象的だったテーマが「田舎のネズミと都会のネズミ、どっちがいい?」という問いかけ。
田舎のネズミは安全に暮らせるけれど、美味しい食事はできない。
都会のネズミは美味しいものを食べられるけれど、猫や人に殺される危険がある。
デンジは「食えて楽しければいい」と都会のネズミ派。らしいですよね。
一方でレゼや天使の悪魔は田舎のネズミがいいと言います。その価値観を持っているからこそ、二人のキャラクター性がより際立って見えました。
盛大に人を殺しているけれど、本当は平和に穏やかに暮らしたい――そんな一面が垣間見えて、より魅力的に感じられるんです。
そして終盤。カフェ「二道」に向かうレゼ。
その路地で彼女を待ち受けていたのはマキマでした。正確には、最後の一撃は天使の悪魔によるものでしたが、演出がゾッとするんです。
デンジが待つ「二道」へと続く路地を小走りするレゼ。その足元には数匹のネズミが走り抜けます。
「まぁ、路地だからいるよね」と思っていたら、次第にネズミの数が膨れ上がり、うじゃうじゃどころか山のように増殖。
そのネズミの群れからマキマが姿を現すんです。
この登場だけでマキマの恐怖度が一気に跳ね上がりました。
しかも彼女が口にしたのは――「私も田舎のネズミが好き」。
「いい」ではなく「好き」。まるで支配者が対象を選別するような言葉に背筋が凍りました。
圧倒的な力でレゼを瞬時に無力化し、天使の悪魔に仕留めさせる流れも秀逸。
そして、なにより切なかったのは……レゼが最後までデンジの待つ「二道」へ辿り着けなかったこと。
あと少しで彼の元に行けたのに、そのわずかな距離すらマキマの支配によって断たれてしまった。
さらには死に際に――「本当はね、私も学校行ったことなかったの」――と心の中でデンジに告白するんです。声には出せないからこそ、余計にしんどい。
しかもデンジは、そんな裏側を何も知らず、ただ「二道」で花束を抱えながらレゼを待ち続けていたんです。
(あんなに殺されかけたのに、レゼのために花を選んで買ってきて、さらにじっと待ち続けるなんて……なんて健気なの!)
「もし辿り着けていたら」と想像するたび、レゼの切なさとデンジの無垢さが重なり、胸がぎゅっと締めつけられるシーンでした。
そんなデンジの前に現れたのが、血抜きを終えたパワーちゃん。レゼが来ず落ち込むデンジに近づき、
「なあんじゃその花?ワシに似合いそうじゃのお…!差し出せ!」と。
その傲慢さが逆に愛らしくて、思わず笑ってしまいました。
張り詰めた切なさを吹き飛ばすように空気を変えてくれるパワーちゃん、本当にありがとう。かわいいね。
ちなみに、その花束はデンジが食べました(笑)。
ネタバレありの感想まとめ
今作はひと言でいうと、デンジの心臓(チェンソーの心臓)が美女によるハニトラで狙われる物語でした。
結局レゼはチェンソーの心臓を奪うことはできませんでしたが……デンジの“心”は、間違いなく奪っていたと思います。デンジの無垢さが、本当に愛おしいんですよね。
全体を通して、背景美術へのこだわりも素晴らしかったです。
学校のプールの描写は思わず見惚れるほど美しく、路地の薄汚れた雰囲気や独特の空気感もリアルに再現されていて、作品の世界に一層引き込まれました。
そして音楽!
主題歌「IRIS OUT」は文句なしにかっこいい。チェンソーマンと米津玄師の相性の良さを改めて実感しました。
さらに驚かされたのは、エンディングの「JANE DOE」。まさかの米津玄師&宇多田ヒカルでデュエット! 豪華すぎて鳥肌が立ちました。誰が想像できたでしょう、この奇跡のコラボ。
……もちろん、最高でした。