(起)あらすじ
舞台は、今とあまり変わらない少しだけ未来の世界。
主人公の酒寄彩葉は、ゲームと推し活が趣味の普通の女子高生。母親との折り合いが悪く、身一つで上京してきた彼女は、生活費と学費を稼ぐために学業とバイトを両立する超多忙な日々を送っていました。
そんなある日のバイト帰り、彩葉は七色に光る『ゲーミング電柱』を発見し、そこから現れた赤ちゃんを成り行きで引き取ることに。驚くことに、その赤ちゃんはたった数日で彩葉と同年代の姿へと成長。「月からやってきた」と語るその少女を、彩葉は「かぐや」と名づけるのでした。
多忙な日々を送る彩葉にとっての一番の癒しは、仮想空間<ツクヨミ>でのゲームや、大人気AIライバー・月見ヤチヨの推し活です。ある日、彩葉がかぐやを連れてヤチヨのミニライブに参加すると、ライブ終了後『ヤチヨカップ』なるイベントの開催が告知されます。
それは、ツクヨミ内で最も多くの新規ファンを獲得したライバーが優勝し、優勝者にはなんと『ヤチヨとのコラボライブの権利』が進呈されるというものでした。
ヤチヨにメロメロな彩葉を見たかぐやは、「ヤチヨカップ優勝する!」と高らかに宣言。
そこからかぐやのライバーとしての活動が幕を開けるのでした。
と、ここまでが『起』の簡単なあらすじとなります。
ここから『起』の内容をさらに深掘りしていこうと思います!
七色に光るゲーミング電柱
まず冒頭では、本作の主人公・酒寄彩葉(さかより・いろは)という人物について描写されます。
彩葉は母親との折り合いが悪く、身一つで上京し都内の進学校に通う女子高生です。学校では才色兼備・文武両道と、他の生徒たちも憧れる優等生。放課後にはアルバイトをし、生活費と学費を稼ぐ超多忙な日々を送っていました。
そんな頑張り屋な彩葉が、いつも通り学校へ行き、アルバイトを終えて疲れ果てていた帰り道。多忙な日々を乗り越え、ついに3連休に突入したようで、「久々に1日6時間は寝られる……」と呟く様子を見ると、普段どれだけ多忙な日々を送っているかが窺えます。
また、このシーンですが、彩葉のスマホに映るSNSの画面から見事なツイ廃ぶりが窺えて思わず笑ってしまいました。
完璧な優等生を演じる一方で、こうした人間味のあるところが彩葉の魅力だと思います。
そして、彩葉は音楽アプリで自身の推しであるAIライバー・月見ヤチヨの『Remember』という楽曲を再生します。ここから音楽と共にスタッフロールが表示される演出が最高です。まるでTVアニメのオープニングのような雰囲気があり、これから始まる物語へのワクワク感が一気に高まりました。
彩葉が一人暮らしをするアパートの前まで帰ってくると、なんとそこには「もと七色に光るゲーミング電柱なん一筋ありける」。
まるでゲーミングキーボードやマウスを彷彿とさせるような電柱を見つめ、「ハッ、何だ幻覚か」と部屋へ帰ろうとする彩葉。すると突如、電柱に観音開きの小窓が出現してゆっくりと開き始めます……が、彩葉は何か嫌な予感でも察したのか、無言でピシャリと小窓を閉じました。そして何事もなかったように再び歩き出そうとしますが、またしても小窓が開き始め、彩葉が真顔で閉じる。そんな無言の攻防の末、最後は彩葉の抵抗を押し破るように、小窓が力づくで開け放たれました。
そこから出てきたのは、なんと赤ちゃんです。
非現実的な状況に呆然とする彩葉でしたが、「すまん! しかし、わたくし手一杯ですので」と背を向け、三度部屋に帰ろうと歩き出します。しかし物騒な夜の街に赤ちゃんを置き去りにするわけにもいかず、警察に届けようと赤ちゃんを抱き上げました。その瞬間、ゲーミング電柱から小窓がスッと消え去り、ただの電柱になってしまったのです。
突然現実に引き戻され、「この状況じゃ、私がさらったみたいでは?」と戦慄する彩葉。そんな不安を感じ取ったのか、突然赤ちゃんが泣きだしてしまい、パニックになった彩葉はひとまず部屋に連れ帰ることにしました。
『竹取物語』のオマージュとして、竹の代わりに七色に光る『ゲーミング電柱』から赤ちゃんが出てくるシーンは流石に笑っちゃいますね。しかも、無言で小窓を閉める彩葉(笑)。冒頭からかなりのインパクトです。
そして、ひとまず部屋に連れ帰ってきたものの、赤ちゃんはなかなか泣き止みません。おまけに隣の部屋から壁ドンされ、それに驚いた赤ちゃんがさらに大声で泣いてしまいます。なんとかあやそうと子守歌を歌おうとする彩葉ですが、知っている歌が全く出てきません。
代わりに推しの歌を口ずさむと、赤ちゃんはようやく寝息を立て始めてくれたのでした。
赤ちゃんが寝ると、彩葉はすぐに110番し、「七色に光る電柱から赤ちゃんが出てきて……」と説明するものの、自分で言っていて馬鹿らしくなってしまったのか、「あっ、大丈夫です。いま大丈夫になりました! すみません!」と思わず電話を切ってしまうのでした。
赤ちゃんが急成長!
翌朝。彩葉は心なしか赤ちゃんが昨日よりも大きくなっているような気がして違和感を覚えます。「なぜ私はこんなことを……?」と戸惑いながらも、赤ちゃん用品店に行ったり、ミルクを飲ませたり、おむつを替えたりと、慣れないお世話に奔走することに。
そして深夜。疲れ果てて寝落ちしていた彩葉は、「ねぇねぇ、お腹空いた」という声で目を覚まします。寝ぼけたままミルクを作ろうとしたその時、ふと赤ちゃんが小学生サイズにまで急成長していることに気付いて驚愕。さらに流暢に話せるようになっていたのです。
「あなた、どこから来たの?」と尋ねると、少女は窓から覗く月を指差し、「月での日々が超つまんなくて逃げてきた」と答えます。
その言葉から『竹取物語』を連想した彩葉は、タブレットで絵本を見せながら「出てきたのは竹じゃなくて電柱だったけど。あんた、もしやかぐや姫なの?」と問いかけました。
「じゃあ彩葉はこのおじいさんなわけ?」という少女の言葉にイラっとしつつも、『月からお迎えが来て、翁たちが引き渡すまいと戦うもむなしく、姫は羽衣を着せられて地球のことは忘れ、月に帰る』という物語の結末を教えることに。
その結末を聞いた少女は「なにそれバッドエンドじゃん!」と大ブーイング。しかし、そんな少女に対して彩葉は「暴れたって決まってることが変わるわけじゃない。受け入れて覚悟するしかない」と、どこか冷めたように諭すのでした。
この言葉は、酒寄彩葉という人物を表す言葉のような気がしてとても印象的です。
運命を受け入れるよう諭す彩葉の言葉を聞き、少女は「決めた! 自分でハッピーエンドにする! そんでハッピーエンドまで彩葉も連れてく! 一緒に!」と力強く意気込みます。
しかし彩葉は「ハッピーエンドいらない。普通のエンドで結構です」とあっさり塩対応。「ウソウソ、そんなわけないでしょ~」と不気味な笑みを浮かべて絡んでくる少女に対し、彩葉は「てか、寝かしてぇ~!」と嘆くのでした。
ここで出てきた「ハッピーエンド」という言葉は本作の重要なキーワードですね!
月から来た「かぐや」
その翌朝。彩葉が起床すると、少女の姿はどこにもなく、「出て行ったか。いや、過労による夢だったのかもしれん」とガッツポーズ。しかし、台所の戸棚がパカッと開き、「ここだよー」と少女が出てくるシーンは思わず吹き出してしまいました。
その後、学校の支度を済ませた彩葉が朝ご飯を作っていると、少女がタブレットでライブ配信を見ながら「彩葉がいっつも見てるこの人、誰?」と尋ねてきます。配信に映っていたのは、大人気のAIライバー・月見ヤチヨ。分身も出てきて、歌って踊れる8000歳という設定を聞き、少女が目を輝かせます。
そして登校時間。出掛けようとする彩葉に、少女は「やだやだ! 一緒にいて!」と駄々をこねます。その時には少女はまた大きくなっており、気付けば彩葉と同年代の姿になっていました。
「学校ってそんなに大事なわけ?」と聞く少女に「命より大事!」と彩葉は言い、朝ご飯の『粉と水のパンケーキ』なる画期的貧乏飯を置いて家を出るのでした。
それを食べた少女は「くそまじぃ」と正直な反応。たしかに、粉と水だけのパンケーキは美味しくなさそうです……。
学校での音楽の授業。見事なピアノの腕前を披露し、相変わらずの優等生ぶりを見せる彩葉。そんな学校での日常が、3連休で非日常を味わった彩葉にとっては安らぎでした。
放課後。彩葉は友人の芦花と真美と共に新しく出来たというカフェに行くことになります。友人2人は「彩葉ノートで赤点回避記念」と言い、お礼として彩葉にパンケーキをご馳走するために彼女をカフェに連れてきたのでした。
この3人組、めちゃくちゃ良いですよね!
そして、彩葉が「いただきます」とフォークを伸ばしたその瞬間。サッと、何者かにパンケーキを横取りされてしまいます。顔を上げると、そこには家でお留守番をしているはずの少女の姿が。絶望のあまりジョジョ風の作画になる彩葉(笑)
カフェのパンケーキを食べた少女は「彩葉のと全然違う!」と、またしても残酷なほど正直な感想。さらに、彩葉の友人2人に向かって「月から来たの!」と堂々と自己紹介してしまう始末です。彩葉は「つ、築地だよねー」と必死にフォローし、なんとか従妹という設定で誤魔化しました。
友人に名前を聞かれ、彩葉が咄嗟に「かぐや」と命名すると、当の本人はその名前をすっかり気に入った様子。結局、彩葉は「ごめん、後で埋め合わせするから!」とかぐやを引きずって嵐のようにカフェを後にするのでした。
その帰り道。「正体バレたらどうすんの! 何で家から出てくんの!」と怒り心頭の彩葉ですが、かぐやは「だってつまんないんだもん」と悪びれる様子がありません。
彩葉は「そんな風に生きてると自滅するよ?」と説教しかけますが、ふと実家の母親に言われた言葉と自分が重なり、思わず言葉を飲み込みます。
そんな彩葉の複雑な心境をよそに、能天気なかぐやが「ねぇ、これどうやって使うの?」と無邪気に見せてきたのは、彩葉とお揃いの『スマコン』(おそらくスマートコンタクトレンズの略)でした。『スマコン』は、仮想世界<ツクヨミ>にログインするためのコンタクトレンズ型のデバイス。なんとそれをかぐやは彩葉のウォレットから勝手に購入していたのです。その額、なんと124,400円。「死ぬ気で貯めたんですけど……」と思わぬ大出費に号泣する彩葉が不憫でした(笑)
帰宅後。彩葉を元気付けようと思ったのか、かぐやが豪華な夕飯を作ってくれます。しかし、その材料費や散らかり放題の台所を目の当たりにした彩葉は「お金がないのよ……貧乏なのよ……」と、もはや泣きながら精神崩壊。それでも久々に食べたまともなご飯に食べる手が止まらず、「ムカつく……クソッ。ムカうまい」と悪態をつききれません。
食後、彩葉は「ただでさえ親にムリ言って一人暮らししている手前、うちではかくまえないよ」と現実的な話を切り出します。しかし、目を輝かせながら夢中でプログラミングをしているかぐやの姿に、ふと自身の幼少期を重ね合わせる彩葉。
大きなため息を一つ吐いた後、『目立たない』『許可なく外に出ない』『私の邪魔をしない』『食費は定額制』という条件のもと、月の迎えが来るまではうちにいていいよと、ついに同居の覚悟を決めるのでした。
ヤチヨカップ開催
そんなやり取りをしていると、不意にスマホのアラームが部屋に鳴り響きました。彩葉はこの時間までに予習を終わらせておくつもりだったのに、と頭を抱えます。
そして、気を取り直した2人は例のデバイス『スマコン』を目に装着し、本作のもう一つの舞台である仮想世界<ツクヨミ>へとダイブするのでした。
2人が降り立った仮想世界<ツクヨミ>は、AIライバー・月見ヤチヨが自ら創設し、全世界で1億人以上のユーザーを抱える巨大なVR世界です。
彩葉がアラームをセットしていた理由、それはこの<ツクヨミ>で開催されるヤチヨのミニライブに参加するためでした。かぐやを連れてライブ会場にやってきた彩葉は、握手券付きチケットを眺めながらニヤニヤが止まりません。
そうして胸を高鳴らせているうちに、いよいよライブが開演。巨大な鳥居の上に「ヤオヨロー!」という掛け声とともに、ついに月見ヤチヨが姿を現しました。
「幾千の時を巡って今 僕ら出会えたの ほら見失わないように 手を離さないで」
そんな歌い出しから披露された楽曲は「星降る海」。
物語の結末を知り、本作を観るのが2週目だという方で、このフレーズを聴いて泣かない人が果たしているでしょうか。ヤチヨのライブ後、感動のあまり鼻水を垂らしながら号泣する彩葉の姿は、まさに視聴者である私自身の状態そのものでした……。
なんとこちらのライブシーンですが、YouTubeの公式チャンネルでも公開されています!
【本編ライブシーン】星降る海 – Aqu3ra / 月見ヤチヨ(cv.早見沙織) from #超かぐや姫 !
「感謝! 感激! 雨アラモード!」
ライブの熱狂も冷めやらぬ中、ヤチヨから『ヤチヨカップ』なるイベントの開催が告知されます。参加資格があるのは、<ツクヨミ>で活動する全ライバー(配信者)。1ヵ月という開催期間の中で、最も多くの『新規ファン』を獲得した者が優勝となります。
そして、優勝者にはなんと『ヤチヨとのコラボライブの権利』が進呈されると聞き、彩葉は「うっそ! コラボッ!?」と限界オタク化。そんな彩葉の様子を見て、かぐやは目を輝かせながら「彩葉、一緒にやろ!」とヤチヨカップへの参戦を誘うのでした。
と、そこにド派手な演出と共に現れたのは、帝アキラ、駒沢雷、駒沢乃依の3人からなる超人気プロゲーマーユニット『ブラックオニキス』でした。<ツクヨミ>内で圧倒的な人気と実力を誇る彼らは、「俺たち優勝するから、ヤチヨちゃんコラボよろしくね」と、他の全ライバーに向けて余裕たっぷりの宣戦布告をしに来たのです。
「一緒にハッピーになって、めでたししちゃお~!」
「しちゃう~♡」
というふうに相変わらずヤチヨにメロメロな彩葉を見て、「むぅ……」と頬を膨らませたかぐやは、突然「ヤチヨォォォー!」と大声で叫んで会場の注目を集めます。
その直後、ヤチヨの口元が意味深にふっと綻ぶのですが……ここでも全貌を知る『2週目勢』は涙腺崩壊したことでしょう!!!
大観衆の前で、「ヤチヨカップ優勝する! そんで絶対コラボライブする!」と高らかに宣言したかぐや。ライバーでなければ参加できないと知り、かぐやはライバーになることを決意します。
彩葉とかぐやの2人が去った後、ヤチヨが「いつも来てくれてありがとね。彩葉」と優しく呟くシーンでは、本日3度目の大号泣です。2週目、感情が忙しいです。
そして現実世界へログアウト後。パソコンで『ライバー なり方』と検索するかぐやを見て、彩葉はふと彼女の髪色が<ツクヨミ>内と同じ金髪に変化していることに気が付きます。さらにかぐやは髪色を緑や赤に自在に変え、彩葉は理解の範疇を超えた宇宙人のトンデモ能力に度肝を抜かれるのでした。
結局、かぐやは金髪が一番しっくりきたようです。
以上、ここまでが『起』の内容になります。
酒寄彩葉という人物像を描写しながら、コミカルなテンポで物語の世界観へと引き込んでいく導入が本当に見事ですよね。すでに結末を知っている2週目勢にとっては、ヤチヨの言動ひとつひとつに心が震わされ、感情が大忙しな序盤だったと思います(笑)
さて、ここまで読んでくださった方はお気付きかもしれませんが……本作が良すぎるあまりに書きたいことが多すぎて、すでにかなりの大ボリュームになってしまいました。
というわけで、ここから先の展開はもう少しスピーディーに、要点を絞りながらレビューしていきたいと思います。
引き続きお付き合いのほど、よろしくお願いします!
(承)あらすじ
夏休み。勉強とバイトで大忙しの彩葉をよそに、かぐやは『ヤチヨカップ』優勝を目指し、本格的にライバー活動をスタートさせていました。
音楽経験のある彩葉は、かぐやから自身の『プロデュース』を懇願され、渋々ながらかぐやのライバー活動をサポートすることに。こうして誕生した『かぐやいろPチャンネル』は、<ツクヨミ>での路上ライブやゲーム配信などを通して瞬く間に注目の超新星として頭角を現していきます。
しかし、学業にバイト、かぐやのサポートというハードワークを全て1人で抱え込んだ彩葉は、ついに過労で倒れてしまいます。その姿を見たかぐやは「いっぱい無理言っちゃった」と反省するのでした。
そして迎えた『ヤチヨカップ』の中間発表。『ブラックオニキス』が下馬評通り首位を独走する中、かぐや達もダークホースとして着実に順位を伸ばしていました。
そんなある日、なんと『ブラックオニキス』から直々にゲーム対決の挑戦状が舞い込み、彩葉、かぐや、そしてヤチヨの3人で挑むことに。
圧倒的な実力差に苦戦を強いられながらも、彩葉とかぐや2人の連携で見事相手のリーダー・帝を撃破するという大健闘を見せます。試合自体には惜しくも敗れてしまいますが、この熱い戦いを通じて多くの新規ファンを獲得したかぐや達が見事『ヤチヨカップ』の逆転優勝を勝ち取るのでした。
と、ここまでが『承』のあらすじです。
ここから、さらに深掘りしていきます!
『かぐやいろPチャンネル』始動
夏休みに突入したものの、彩葉のスケジュール表は勉強にバイトと大忙し。
かぐやは「遊んでぇ」と駄々をこねますが、彩葉は「一日も無駄に出来ないから邪魔禁止ね」と般若のような顔で一蹴します。それもそのはず、彩葉のアパートはかぐやの配信用の小道具で溢れかえっていたのです。
あれからライバー活動を始めていたかぐやは、動画サイトに投稿した初配信のアーカイブを彩葉に見せます。しかし、そこに映っていたのは落書きレベルの手書きのアバターと背景、さらに不協和音のジングルという手作り感満載の映像でした。
「今日はやること思いつかないからこれで終わり」と中身が全くない上に、最後は誤ってインカメが起動し盛大に顔バレするという、完全なる放送事故でした……。
色々とツッコミどころ満載の動画ですが、中でも彩葉が頭を抱えたのは「なんだ、この不安になる不協和音は……」と呆れるほどの不気味なジングルでした。
見かねた彩葉は、かぐやに頼まれるがままキーボードを弾くことに。実はピアノの経験があった彩葉ですが、鍵盤に触れようとした瞬間、亡き父との記憶が脳裏をよぎり、音を鳴らすのを躊躇ってしまいます。それでも、正面で目を輝かせるかぐやを見て、彩葉は即興のジングルを奏でるのでした。
その音を聴いたかぐやは「彩葉の曲を私が歌えば大バズ確定じゃん!」と目を輝かせ、曲を作ってとおねだりします。押しに弱い彩葉は昔作った曲を聴かせ、かぐやがそれに合わせて歌いました。そしてかぐやは「彩葉、プロデューサーになって! 一緒にヤチヨカップ優勝しよう!」と懇願しますが、彩葉は「ムリです」と即答。しかし、「このまま終わりたくない。ハッピーエンドにしたいなぁ……」とかぐやの上目遣いに負け、結局プロデュースを引き受けてしまうのでした。ちょろは……。
そしてここからは、劇中歌であるかぐやの楽曲『私は、わたしのことが好き。』に乗せて、『かぐやいろPチャンネル』としてライバー活動に奮闘する2人の日々が描かれます。
<ツクヨミ>での路上ライブをはじめ、アニメの同時視聴配信でバッドエンドにブチ切れるかぐやの姿や、芦花や真美との交流、さらには約24時間にも及ぶゲーム配信の様子など、あらゆる企画に体当たりで挑み、瞬く間にライバーとして注目を集めていく過程がミュージックビデオのように、ダイジェスト映像でテンポ良く流れていきます。
【Lyric Movie】私は、わたしの事が好き。– HoneyWorks / かぐや(cv.夏吉ゆうこ) from 超かぐや姫!
個人的に面白いと思ったのが、雑談配信中に突如始まった『かぐや争奪KASSEN選手権』のシーンです。かぐや宛てに「結婚して!」という大量のスパチャが届くのですが、「いろPに勝ったら結婚な!」というかぐやの思い付きで、急遽彩葉が視聴者と様々なゲームで対決することに。キツネの着ぐるみを着て『いろP』に扮装した彩葉が次々と現れる求婚者を容赦なくボコボコにしていく姿が大好きです!
また、原典である『竹取物語』の「求婚者たちに無理難題をふっかける」というエピソードを現代の配信カルチャーに落とし込んで見事にパロディに昇華しており、非常に秀逸なシーンだと思いました。もっとも、無理難題をふっかけられるのはいつも彩葉なのですが……。
そして本作を語る上で欠かせないのが、例のハンドシェイクですよね!
「かぐやと彩葉の合図。仲良しのやつ!」
本当に可愛くて何度も見返してしまいます!
彩葉の過去
そんな中、勉強とバイトに加え、かぐやのサポートまで全て1人でこなしていた彩葉がついに過労で倒れてしまいます。ふと目を覚まし、「バイトの時間!」とパニックになる彩葉でしたが、すでにかぐやが欠勤の連絡を入れてくれていました。
しかし、ギリギリで予定を組んでいるため、「何日も休むと追いつけなくなる」と頭を抱える彩葉。そんな姿に、かぐやは「なんで彩葉はそんなに1人で頑張らないといけないの?」と尋ねます。
彩葉は実家を出る条件として、「学費も生活費も全部自分でまかなう」ということでようやく母親との折り合いが付き、奨学金のために休むわけにはいかなかったのです。
「みんなそんなことしてなくない?」と不思議がるかぐやに対し、彩葉は一人暮らしを始めた頃のことを振り返り、「何にもないし誰にも頼れないけど、自分の力で生きるんだと思ったら、めっちゃ力沸いてきた」と語ります。
しかし、厳しすぎる母親の話を聞いて「そんなのおかしい!」と怒るかぐやに、彩葉はふと「かぐやには……」と言いかけて、言葉を飲み込むのでした。
この描写からは、『本当は誰かに頼りたいけど、彼女の中にある様々なしがらみがそれを許さない』という彩葉の葛藤が垣間見えた気がします。一人で生きていくという彼女の『強さ』の裏に、年相応な少女の等身大の『弱さ』が描かれているのではないかと感じました。
そして迎えた『ヤチヨカップ』の中間発表。
『ブラックオニキス』が下馬評通り首位を独走する中、『かぐやいろPチャンネル』も注目のダークホースとして着実に順位を伸ばし、上位陣を猛追していました。
そんな中、突如プロゲーマーである『ブラックオニキス』の帝アキラ直々に『KASSEN』でのゲーム対決の挑戦状が舞い込みます。帝は『竹取物語』にかけて、「かぐやちゃんが負けたら、やっぱ俺と結婚かな?」と冗談交じりに挑発してきます。これまで配信で数々の求婚者を撃退してきた彩葉の前に、最強の刺客が現れたのでした。
ヤチヨカップ
注目のイベントが始まります!
王者『ブラックオニキス』が、異例の速度でのし上がった超新星『かぐやいろP』に宣戦、そして求婚(ノリ)! 運命を賭けた神戦(かっせん)が、今始まろうとしています!
大勢の観客が見守る中、ついに『ブラックオニキス』VS『かぐやいろP』による直接対決が、幕を開けようとしていました。ヤチヨカップ最終日ということもあり、この勝敗次第ではかぐや達の逆転もあり得る、大注目のイベントです。
対決するゲームは『KASSEN』。
ルールは3対3の3番勝負(2ラウンド先取)。ラウンド取得条件は、マップにある2つの櫓のどちらかを占拠し、相手の天守閣を攻め落とす。もしくは櫓を2つとも占拠するという『MOBA』と呼ばれる対戦ゲーム形式です。
『League of Legends』的な感じでしょうか。
3対3の対決ということで、当初はかぐやといろP(彩葉)、そして友人の真美の3人で出場する予定でしたが、直前に真美が出られなくなってしまったため、助っ人として月見ヤチヨが『かぐやいろPチーム』に加わることになりました。
かぐやの作戦は「ガーッと行って、シュタタタター! そんでバァーン!」です。
対する『ブラックオニキス』はトライデントという作戦。この作戦では複数の敵に1人で応戦する必要があり、彩葉いわく『舐めプ』とのことでした。
ここでのバトルシーンは臨場感満載。
かぐやが愛用する竹のハンマーに乗ってジェット噴射で高速飛行したり、ブーメラン型の大剣で大量のモブ敵を蹴散らすいろP(彩葉)の姿が、大迫力の映像で描かれます。
そんな2人の前に、たった1人で立ちはだかったのが帝アキラでした。
キツネの着ぐるみを着たいろPと鍔迫り合いを演じながら、帝は「お前、彩葉だろ?」とカマをかけてきます。否定するいろPでしたが、「そのスキン当てやすくて助かるわぁ。そのままで後悔しない? 本気出そうぜ」と挑発され、かぐやのために負けられない彼女はついにキツネのスキンを解除。「やっぱ彩葉じゃん。元気そうでなにより」と、ここで最強の刺客である帝の正体が『彩葉の実の兄』であったという事実が明かされます。
驚きも束の間、かぐやと彩葉の2人がかりで帝に応戦しますが、プロゲーマーの圧倒的な実力を前に、1ラウンド目をあっさりと奪われてしまうのでした。
絶望的な状況で迎えた2ラウンド目。しかし、ここでついに反撃の狼煙が上がります。
かぐやの奇策が見事に刺さって相手の陣形を崩すと、ヤチヨの活躍によって相手チームの狙撃手・乃依を撃破。その勢いのまま2ラウンド目を奪取し、『ブラックオニキス』相手に一矢報いるのでした。2ラウンド目を取得し、楽しそうにハイタッチするかぐやとヤチヨの姿が可愛すぎました……。
勝負の行方は、いよいよ3ラウンド目へ。
ここで彩葉の過去が回想として描かれます。父が亡くなった後、厳しい母からいつも彩葉を庇ってくれたのは兄でした。しかし、そんな心の拠り所だった兄が上京するため、家を出てしまいます。「やったら、私独りやん。何で……」と、膝を抱える幼き日の彩葉。このエピソードは、彼女が『1人で生きていく』と決意したきっかけだったのではないでしょうか。
彩葉の回想が明け、運命の3ラウンド目。作戦を変えた『ブラックオニキス』に苦戦する2人でしたが、ここで「かぐやとヤッチョがついてるからさ、頼って〜」とヤチヨが助太刀に現れます。彼女にその場を任せ、帝との一騎打ち(?)に挑む彩葉とかぐや。
ここで雷と乃依を足止めしていたヤチヨが相打ちでそれぞれの残機を使い果たし、勝負の行方は生き残ったかぐやと彩葉、そして帝の3人に委ねられました。
しかし、帝に圧倒的な実力差をまざまざと見せつけられ、「勝てんわ……」とつい弱音を吐いてしまう彩葉。ですが、どんな劣勢でも「絶対に勝つ」と心底楽しそうに笑うかぐやの姿に、幼き日の自分を重ね合わせました。
「もしうちらが勝ったら、そっちもお願い聞いてくれんだよね?」と帝に問いかけ、2人は互いの武器を入れ替える奇策で突撃。『彩葉はいざとなったら自分を犠牲にするはず』という帝の予想を裏切り、武器に仕込んだワイヤーで帝を拘束。2人の見事な連携で最強の兄を撃破するのでした。帝は「やりゃ、できんじゃん」と優しい表情を浮かべ、不器用な兄妹愛を感じられる一幕でした。
そして、帝を撃破した2人は急いで天守閣へと向かいます。
その道中、「彩葉が危なくなったら、かぐやが助ける!」と言うかぐやに対し、彩葉は「かぐやがミスっても私は置いてく〜」と冗談を言って笑います。そんな彩葉の笑顔を見たかぐやが目に涙を浮かべながら「やった~!」と喜ぶシーンにはぐっと来るものがありました。
本当の意味で、彩葉がかぐやに心を開いた瞬間だったのではないでしょうか。
そんな2人の様子を見た観客は「何かいいね、あの2人!」と心を掴まれた様子でした。
そんな中、残機が残っていた帝が戦線に復帰し、猛スピードで天守閣へと急ぎます。
それでも先に天守閣に到着したかぐやが「うぇ~い、勝ち確ぅ!」と盛大なフラグを立てた直後、なんと相手が仕掛けていた地雷を見事に踏み抜き爆散。その隙に帝が天守閣を占拠し、この試合は『ブラックオニキス』に勝利の旗が上がるのでした。
しかし、まだ『ヤチヨカップ』の結果は出ていません。
激闘の『KASSEN』が幕を閉じ、いよいよヤチヨから『ヤチヨカップ』の最終結果が発表されます。そして、試合自体には敗れてしまったものの、独走状態だった『ブラックオニキス』を猛追し、最も多くのファンの心を掴んだ『かぐやいろPチャンネル』が見事逆転優勝を飾ったのでした!
会場から「かぐやいろP」コールが巻き起こる中、2人のもとへ『ブラックオニキス』の面々が歩み寄ります。帝は「これじゃ、勝ったとは言えないな」と敗北を認め、元々無理やり結婚する気なんてなかったと明かします。そして「で、彩葉のお願いって何?」と尋ねる兄に対し、彩葉は「引っ越しの保証人になってほしい」とお願いするのでした。
そこにヤチヨが現れ、「彩葉、かぐや、よく頑張った!」と労います。
ここでヤチヨが言った「かぐやはかぐやだから強いんだな、って思ったよ」というセリフ。そして、ヤチヨは「さて、ここからはクライマックスに向けてハードな展開が待っているかも。このお話を最後まで見届けてね」と、まるで未来を暗示するような意味深な言葉を残して去っていきます。かぐやは「ヤチヨっていつもテキトーじゃない?」と流しますが、結末を知る2週目勢とってはこれがどれほど重く、深い言葉だったことか。
思わず、込み上げてくるものがありました……。
また、3ラウンド目の途中でヤチヨが放った「かぐやとヤッチョがついてるからさ、頼って〜」というセリフ。これも単にゲーム内で苦戦する彩葉へ向けた言葉ではなく、なんでも1人で抱え込もうとする彼女の孤独な内面に直接語り掛けた、深い愛情が込められた言葉だったのではないかと気付かされました。
さて、ここから物語は大きく『転』がっていきます。
(転1)あらすじ
『ヤチヨカップ』優勝を経て、2人の絆はこれまで以上に深まっていました。
ヤチヨとのコラボライブを翌日に控えたある日、かぐやは彩葉のPCから制作途中の楽曲を見つけます。それは彩葉が亡き父と一緒に作っていた初めての曲でしたが、「続きはもう作れない」と彩羽は言います。
そして迎えたコラボライブ当日。満天の星空のように周囲を埋め尽くす観客のペンライトの光に包まれ、最高のライブを終えた3人。しかし余韻に浸っていた矢先、突如として通信障害が発生し、ステージ上のかぐやへと『月からの使徒』が襲い掛かります。ヤチヨの助けでなんとか退けたものの、現実に戻ったかぐやはひどく疲弊しており、2人は互いに『月からの迎え』が近いことを悟り始めていました。
そんな中、彩葉の誘いで訪れた花火大会。並んで夜空を見上げる中、かぐやは「次の満月の夜、お迎えが来る。これが私のエンディング」と明るく告げます。花火が終わっても、彩葉はかぐやの手を握ったまま動くことができませんでした。
そして、かぐやは最後に『卒業ライブ』を開催することを決めます。彩葉も彼女のために、かつて父と作っていた『あの曲』と再び向き合い、続きを作り始めることにしました。
ついに迎えた卒業ライブ。ステージで目一杯の笑顔を見せて歌い踊るかぐやの裏で、彩葉は芦花や真美、『ブラックオニキス』らと共に、月のお迎えに抗うべく戦いに挑みます。
必死にかぐやを守ろうと奮闘する彩葉たちでしたが、その健闘も虚しく、ライブを終えたかぐやは羽衣を着せられ、月へと帰っていくのでした。
さて、『転1』のあらすじはここまで。
本作の構成上、『転』は2つのパートに分けてご紹介したいと思います!
コラボライブ
見事『ヤチヨカップ』優勝を果たした彩葉とかぐやは、狭いボロアパートから高層マンションの広い部屋に引っ越しました。
ここでは、劇中歌である『ハッピーシンセサイザ(Cover)』のポップなメロディに乗せて、これまで以上に絆が深まった2人の微笑ましい新居生活が描かれました。
【本編映像】ハッピーシンセサイザ(COVER) – かぐや (cv.夏吉ゆうこ) from 超かぐや姫!
そして、ヤチヨカップ優勝特典である『ヤチヨとのコラボライブ』を翌日に控えた夜。かぐやは彩葉のノートPCから制作途中の楽曲データを見つけます。彩葉は、もう長らく手を着けておらず「続きはもう作れない」と話します。
ふと、かぐやが「明日の予定、大丈夫だった?」と彩葉に尋ねます。実はライブの日程が重要な模試と被っていたのですが、彩葉はライブに出ることを選んでいたのです。
このシーンには、彩葉の明確な『変化』が描かれていると思います。物語の冒頭では学校に行くのは「命よりも大事!」と語り、過労で倒れるほど学業とバイト漬けだった彩葉が、学業よりもかぐやたちとのライブを優先した。これは彼女の中で『大切なものの優先順位』が変わっているということなのだと感じました。
コラボライブ当日。本番前の控室で「終わったらパンケーキ食べよ!」と無邪気に話すかぐやたちのところに「ヤチヨも食べたいな〜」とヤチヨが登場します。しかし、ヤチヨは『電子の海の歌姫』なので食べることができません。それを聞いたかぐやは「それ何の拷問? かぐやだったら絶対ムリ!」と驚愕するのでした。
そんなコミカルなやり取りですが、2週目の視点で見ると切なく感じてしまいます……。
そしてついにコラボライブが幕を開けます。会場は観客のペンライトの光に包まれ、まるで夜空を埋め尽くす満天の星空のようでした。ライブが始まる直前、暗転したステージの上で彩葉がふとヤチヨに問いかけます。
「ヤチヨのデビュー曲って……もう歌わないの?」
それは、たった1人で上京し忙しい日々に限界を迎えていた彩葉の心の支えにもなった楽曲『Remember』のことでした。その問いに対し、ヤチヨが「あれはもう届いたから、お役目完了〜」と嬉しそうに微笑む姿が個人的には印象的でした。
『Remember』というタイトルの意味やその歌詞に込められた想いは、すでに届くべき相手の心へとしっかり届いていたのです。
「ほら、時間だよ!」とヤチヨの掛け声と共に会場に明かりが灯されました。
ヤチヨは観客に向け、「みんな! 生きるのどうですか〜? いいことあった? それとも泣いちゃいそう? よしよし、全部大丈夫。どんなに孤独な道のりでも、楽しかったな~って記憶が、足元を照らすよ」と優しく語り掛けます。
初見でこの言葉を聞いた時は、自分を肯定してくれているような気がして思わず泣いちゃいそうになり、2週目ではまた別の意味で泣いちゃいそうになりました。
このライブはかぐやと彩葉だけでなく、ヤチヨにとっても夢が叶った特別なステージだったのです。本当に大好きなシーンです。
「この瞬間を忘れられない思い出にしたいから、どうか一緒に踊ってくれる?」
そんな言葉と共に披露されたのは『ワールドイズマイン CPK! Remix (かぐや&月見ヤチヨ ver.) 』です。歌い出しが素敵すぎて鳥肌が立った感覚を未だに覚えています。
圧巻のライブを披露するヤチヨ、必死にキーボードを演奏する彩葉、そして楽しそうにはしゃぐかぐやの姿が本当に可愛くて癒されます。Remixも最高で、また劇中歌ver.ではヤチヨのアドリブやかぐやの笑い声など音源とはまた違った魅力があります。
こちらの映像も公式YouTubeチャンネルで公開されているので、私も何度も見返してます!
【本編ライブシーン】ワールドイズマイン CPK! Remix (かぐや & 月見ヤチヨ ver.) – ryo (supercell) from 超かぐや姫!
そして余韻に浸る間もなく、続いて披露されたのは新曲『Ex-otogibanashi』でした。
この一連のライブシーンですが、映画館の音響設備で体験すると本当に圧倒されます。まるで自分自身が<ツクヨミ>のライブ会場にいるかのような臨場感を味わうことができました。ご自宅で本作を視聴されるのももちろん良いですが、このライブシーンでの没入感は映画館に足を運ぶだけの価値は間違いなくあると思います!
【Lyric Movie】Ex-Otogibanashi – ryo (supercell) / かぐや(cv.夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(cv.早見沙織) from 超かぐや姫!
見事なパフォーマンスで最後まで歌い切った彩葉とかぐや。余韻の中で「めっちゃ楽しかった!」とはしゃぐかぐやは、改めて「彩葉、好き」と真っ直ぐな気持ちを伝えます。さらに「あ~もう、彩葉と結婚しよっかなぁ」と冗談めかすかぐやに対し、彩葉は照れながらも「生活費折半してくれるなら一緒にいるのはいいけどさ」と答えます。
もうそれ、実質結婚ってことでいいですよね!?
出会った当初は「早く出て行ってくれ」と言っていた彩葉でしたが、これまでの日々を通してかぐやとの絆が深まったと改めて実感できる、心温まるシーンでした。
そしてここから、物語は急展開を迎えます。
突如、仮想空間<ツクヨミ>の夜空に不気味な暗雲が立ち込め、ライブ中継をしていたモニターに巨大な満月が映し出されます。それは<ツクヨミ>の中にとどまらず、なんと現実世界でも大規模な通信障害が発生していました。
「ライブの演出か?」と観客が騒然とする中、提灯のような頭部を持つ不気味なアバターの群れがステージ上のかぐやへと迫ります。そのアバターに腕を掴まれた瞬間、かぐやはまるで魂を抜かれたように膝から崩れ落ちてしまいました。
かぐやを庇い、応戦する彩葉。しかし大量の敵に囲まれ、絶体絶命というその時。ヤチヨが助太刀に入り、なんとか提灯アバターの襲撃を退けるのでした。
その後、ツクヨミからログアウトした2人。彩葉は先ほどの襲撃を思い出し「ねぇ……」と何か問いかけようとしましたが、言葉を飲み込みました。その代わりに「コラボライブ終わっちゃったね」と笑いかけると、かぐやは「まだまだやりたいことだらけなんだ!」と普段通り明るく振舞ってみせますが、どこか疲弊した様子。「寝まーす」とかぐやが寝室に向かった後、彩葉はふと自分自身のやりたいことについて考えるのでした。
花火大会
翌日、かぐやはいつも通り元気な様子でした。しかし彼女の視界には、例の『提灯アバター』が監視するように付きまとって見えていたのです。かぐやは『月からの迎え』が近いことを静かに悟り始めていました。魚を捌いたり、寿司を握ったり、ラーメンを麺から作ろうとしていたのは、この世界でやり残したことを時間が許す限り叶えようとしているのではないかと気付き、胸が締め付けられました。
そんな中、彩葉は友人の芦花と真美から「夏の終わりに花火などいかがかな~?」と提案されます。彩葉は「みんなで?」と返しますが、2人には『夏休みの宿題』という重大な使命が残されていました。「あとはよしなに〜」と気を利かせて去っていく友人たちのアシストを受け、彩葉は自らかぐやに「遊ぼう」と花火大会に誘います。
まさか彩葉から遊びに誘われる日が来るなんて思ってもみなかったのか、かぐやは「やった! やったやったやった~!」と号泣しながら大はしゃぎするのでした。
この彩葉の「遊ぼう」からしか摂取できない栄養があると思います。
花火大会当日。2人は可愛らしい浴衣を着て会場へと向かいます。
夕方の河川敷を歩く姿や、射的や蟹釣りなどの屋台で遊ぶどこかノスタルジックな様子が美しい映像で描かれます。
ふと彩葉がかぐやの腕輪に目を留め「いつも着けてるよね、それ」と尋ねると、かぐやは「何だか落ち着くんだ。ふるさとって感じ?」と微笑みました。
そんな会話をしているうちに、いよいよ花火が上がり始めます。
夜空に花火が打ち上がる中、かぐやは故郷である『月』について静かに語り始めます。「味も温度もなくてマジでつまらないの」「決められた役割をずっと繰り返すだけ」と、そんな退屈な月から見た彩葉たちの世界は、複雑で、1回きりで、自由に見えたのだと。
しかし同時に「でも……みんな抑えてもいるんだよね、自分の気持ち。もっと大事なもののために」と語りかけ、彩葉に「お母さんのこと、好き?」と尋ねます。
涙を堪えながら「嫌いになれたらなって、何回も思ったよ」と本音をこぼす彩葉。その言葉に「そんなん、彩葉余計かわいそうじゃん」と涙を浮かべるかぐやは、「『かぐやには分かんない』って言いたかったっしょ?」と以前彩葉が過労で倒れた際に言いかけた言葉を実は気に病んでいた様子でした。しかし彩葉は幼い頃に母親に言われた言葉を重ねながら、「違うよ、言いたかったんじゃない。言いたくなかったの」と告げるのでした。
その時、彩葉は思わずかぐやの腕を強く掴みます。「かぐや、帰っちゃうの?」と、彩葉もまた、かぐやが月に帰る日が近いことを悟っていたのです。
「かぐやは、かぐや姫だったみたい」と寂しげに笑い、次の満月の夜にお迎えが来ると告げるかぐや。「かぐやはかぐや姫じゃないよ」と必死に引き留めようとする彩葉でしたが、かぐやは「最後の日までめちゃくちゃ楽しく過ごしましたとさ……って。これが私のエンディング、超楽しく運命に向かって走ってく!」と、どこまでも明るく気丈にそう言います。
抗いようのない運命を前に、彩葉は何も言うことができず、ただ黙って彼女の手を握り締めることしかできませんでした。花火が終わった後も、2人は名残惜しさからしばらくその場を動くことができなかったのです。
卒業ライブ
月からのお迎えが来る満月の日、<ツクヨミ>でかぐやの『卒業ライブ』の開催が決定します。残された時間が刻一刻と迫る中、彩葉は「いつもの暮らしが、やっと戻って来るってだけ。元の私に戻るだけ……」と自分に言い聞かせ、必死に運命を受け入れようとしていました。そんな中、彩葉が「新しい曲、作る?」と提案すると、かぐやは以前彩葉のPCで見つけた「あの途中で終わってた曲!」と無邪気に答えます。彩葉はかぐやの最後のステージのため、制作途中だった楽曲の続きを書き始めました。
一方その裏では、かぐやが自分が去った後の彩葉を思って『簡単に作れる自炊レシピ』をメモに残すなど、月に帰る準備をしている様子が描かれます。
そんな日々は一見何気ない日常のようでありながら、確実にお別れのタイムリミットが近付いてきているのが伝わってきて、心が締め付けられました。
深夜。ふとかぐやが目を覚ますと、彩葉がまだ机に向かって楽曲制作をしていました。その曲を聞いて「うわ、あの曲じゃん!」と目を輝かせるかぐやに対し、彩葉はこの曲が実は亡くなった父と一緒に作っていた初めての曲だ、ということを話します。
「続きの作り方、思い出せないな〜」と言う彩葉に「じゃあ彩葉の代わりに勝手に歌詞作っちゃおう。きっとお父さんも喜ぶに違いない!」と、即興で歌い始めるかぐや。「これで、いいんじゃん」と笑うかぐやに「いいのかも」と彩葉も微笑みかけます。
私はこの『制作途中の楽曲』が、彩葉の内面を現しているのではないかと感じました。
「お父さんが死んじゃってからは、何曲か作ったんだけどいつも何か違う気がしてやめちゃった」という彼女の言葉は、決して音楽だけを指しているわけではないと思います。夢中で何かに打ち込んでいた彩葉の心や時間は、父の死を境にこの『未完成の楽曲』と同様に止まってしまったのではないでしょうか。「続きの作り方、思い出せないな〜」という弱音の通り、あの頃の純粋な気持ちを忘れてしまったからこそ、彩葉はかぐやが何かに夢中になっている姿に心惹かれたのだと思います。この一連の描写は、彩葉が止まっていた心や時間をもう一度動かそうと藻掻く姿を、制作途中だった楽曲の続きを作り始めるというシーンを通して描いているのだと感じました。
曲を仕上げるため徹夜で作業に没頭する彩葉。しかしどうしても続きが作れず、『ワンコーラス』でいくことを決め、作業を続けます。その最中、ふと父と一緒に作っていたその楽曲のメロディが、ヤチヨのデビュー曲である『Remember』と同じであることに気が付き、「何で?」と疑問に思う彩羽のシーンがここで描かれました。
そして、満月の夜。ついに『卒業ライブ』の日が来てしまいました。
ライブの準備中、かぐやが大切に身に着けていた腕輪を「これ、彩葉にあげる」と差し出します。彩葉は「いいの?」とそれを受け取るのでした。
その後、本番を控えたかぐやの前に卒業ライブのプロデュースを担当することになったヤチヨが現れます。ふと「私がヤチヨだったら、もっと虜にできたのかなぁ」と呟くかぐやに対し、ヤチヨは「かぐやじゃなきゃできなかった」と真っ直ぐに伝えます。
さらに「いってらっしゃい、かぐや。かぐやなら全部大丈夫、ヤッチョが保証しちゃう!」と力強く背中を押すヤチヨ。その言葉に「超〜無責任」と笑い、かぐやはライブに挑むのでした。
結末を知った上でこのシーンを見返すと、ヤチヨの「いってらっしゃい」や「かぐやなら全部大丈夫」という言葉の重みに気付かされます。ヤチヨの言葉はいつも適当なようで、実はどこまでも重く、深い愛情に満ちているというのは2週目でないと気付けませんでした。
ついに幕を開けた、かぐやの卒業ライブ。
「みんな、ありがと〜! 今日でお別れみたいなんだけど、悲しくはしたくないんだ。みんなでお見送りしてハッピーに卒業させて」と、ステージ上で気丈に明るく語りかけるかぐや。するとその時、頭上から彩葉や芦花、真美。さらにはかつてライバルとして戦った『ブラックオニキス』の面々が現れました。
彩葉は「私たちは私たちで精いっぱいやるから、万が一勝っちゃったらパンケーキ作ろう!」とかぐやに約束し、原典である『竹取物語』の翁たち同様、かぐやを引き渡すまいと『月の使者』と戦うことを決意していたのです。
ステージ上で目に涙を浮かべながら、「みんな……自由だ~!」と笑顔で叫ぶかぐや。
その声を合図にライブが幕を開けた直後、ついに『月のお迎え』が襲来します。
かぐやが歌う劇中歌『瞬間、シンフォニー。』のパフォーマンスをバックに、彩葉たちの激闘が始まります。ここではかぐやの素敵なライブ映像と、圧巻の戦闘シーンが交差するように描かれます。彩葉と帝による兄妹の共闘など、息を呑むような大迫力。「バッドエンドになんて、させない!」と、運命に抗って必死に戦う彩葉たちの姿に心を打たれました。
そして、かぐやは『かぐや姫』を思わせる和服の衣装へチェンジし、例の制作途中だった楽曲『Reply』を披露します。最高潮の盛り上がりを見せるライブ。しかしその裏では、月のお迎えに必死に抗う彩葉たちが徐々に劣勢に立たされ、苦戦を強いられます。
そんな激闘と熱狂の中、「ねぇ、彩葉」とかぐやのモノローグが重なりました。
「彩葉の表情(かお)がとてもきれいでさ、私すぐ好きになったんだ」
そう語りかけながら、2人が共に過ごした日々が走馬灯のように回想されます。このシーンは何度見ても、涙が堪えられません……。
「この一瞬が最高のパーティーなんだ」
その歌詞に、彩葉と過ごした愛おしい日々のことが詰め込まれているようでした。
彩葉たちの激戦も虚しく、無情にもかぐやのライブは終わりの時を迎えます。
ついにステージ上へと降り立った『月の使者』たちに導かれ、かぐやはゆっくりと夜空へと昇っていきます。「待って……。まだしたいこといっぱいあるって……」という彩葉の言葉は届きません。最後に「みんなありがとう~!」とファンへ別れを告げたかぐやは、現実の彩葉にそっと寄りかかり、「彩葉……大好き」と涙を流しながら幸せそうに笑いました。
そして羽衣を着せられ、地球での記憶を失ったかぐやは月へと帰ってしまうのでした。
原典である『竹取物語』と同じ結末を迎えたかぐや。
ですが、この物語にはまだ続きがあります。
(転2)あらすじ
かぐやが月に旅立った後、<ツクヨミ>からログアウトした彩葉。すると現実世界にも、かぐやの姿はどこにもありませんでした。
それから彩葉は喪失感から抜け殻のような数日を過ごします。それでも前を向くことを決め、かぐやと出会う前のいつも通りの日常が戻ってきました。
そして、彩葉は「かぐやとの思い出を胸に前に進むよ」と決意し、めでたしめでたし……と、そんなふうに終われるわけなんてありませんでした。
月にいるかぐやに届けるために未完成だった楽曲『Reply』をついに完成させ、彩葉はかぐやとの日々を思い浮かべながら夜空へと歌を届けます。
その時、ふとかぐやの姿がヤチヨと重なりました。
ヤチヨを探し<ツクヨミ>へとログインした彩葉は、そこでヤチヨの相棒である『FUSHI』を発見し、ヤチヨの居場所を尋ねます。そしてFUSHIに案内されたのは、現実世界のとあるマンションの一室でした。そこにあったのは仰々しい機会に繋がれた『タケノコ』。FUSHIに促され、その部屋から再び<ツクヨミ>にログインすると、目の前に背を向けて座るヤチヨの姿がありました。その後ろ姿を見て、思わず「かぐや?」と呼びかける彩葉。そして「ヤチヨは……かぐやなの?」と問いかけます。
その問いに対し、ヤチヨは「今は昔」と、真実を語り始めました。
今は昔、月に帰ってバリバリ働いていたかぐや姫のもとに歌が届きました。そして爆速で仕事を片付け、もう一度地球に行こうとしますが地球の時間では大遅刻。しかし月の超テクノロジーがあれば時間をも超えられ、かぐや姫は時を超えて再び地球へと旅立ったのです。
ですが、もう少しのところで大きな石に当たってしまい、やっとのことで辿り着いたのは8000年も前の地球。壊れた船の僅かな力でどうにか同行していた『犬DOGE』だけが体を得ましたが、かぐやは魂だけの存在になってしまいます。
そして時が経ち、人々がインターネットを開発し、かぐやは初めて魂だけの自分が世界と関われる可能性を知りました。そして仮想世界<ツクヨミ>の歌姫として、再び彩葉と巡り会うことができたのです。
つまり、ヤチヨの正体は8000年前にタイムスリップし、現代まで彩葉との再会を待ち続けた『かぐや』だったのです。
「キラキラのかぐや姫は……もうおばあちゃんです」と声を震わせるヤチヨ。「もし知りたくなかったのなら忘れてもいいよ」と言う彼女に、彩葉は「かぐやの8000年、全部聞かせて」と言うのでした。
そこからヤチヨは8000年間で起きた楽しかった出来事をたくさん話します。しかし、途中でヤチヨが眠ってしまい、彩葉はFUSHIにヤチヨが隠していることを尋ねます。
そして彩葉はFUSHIを通して、楽しいばかりじゃなかったかぐやの8000年の記憶を全て受け止めるのでした。
目を覚ました彩葉の前には心配するヤチヨの姿がありました。
そして彩葉は「かぐやといたい」と素直な気持ちを伝えました。ヤチヨ(かぐや)は彩葉の手に触れ、「触れたらあったかいかなっていつも思うんだ」と寂しげな表情をします。ヤチヨ(かぐや)は魂だけの存在になってから、温度も味覚も感じられません。「また、彩葉と一緒にパンケーキ食べたいなぁ」と涙を流す彼女の姿を見て、ふと彩葉は気が付きます。
「このお話にはまだ続きがある」
そして、彩葉は「私、やりたいことができた」とヤチヨに伝えました。「本当のハッピーエンドまで付き合ってよね」と、8000年越しの再会を果たした2人の物語は、新たな結末へと向かっていくのでした。
月へと届ける歌
かぐやが月に帰った後、<ツクヨミ>からログアウトした彩葉。隣にいたはずのかぐやはもういませんでした。彩葉は「お金勝手に使うし、めちゃくちゃやるし、片付けないし、ず〜っと邪魔だったよ。本当……最悪だよ」と強がるように悪態を吐きながら、静寂に包まれた家の中を歩き回ってかぐやを探します。キッチンの戸棚の中を探す彩葉の姿には、物語冒頭のシーンのように「ここだよー」とかぐやが出てくるんじゃないかという縋るような祈りが垣間見え、胸が締め付けられました。
その時、不意にスマホに通知が届きます。それはかぐやからのウォレット送金の通知でした。『使っちゃった分、かえす! ご迷惑かけました!』というかぐやからの最後のメッセージを見た瞬間、彩葉は「こんな大金……使えるかよ、バカ野郎!」と泣き崩れました。
それから彩葉はかぐやがいなくなった喪失感から抜け殻のような日々を過ごします。
常に気を張り、休む間もなく動き回っていた彩葉が完全に生気を失って布団の上で蹲る姿は、見ているこちらの胸まで張り裂けそうで、見るに堪えられませんでした。
それでも、彩葉はやがて前を向き、かぐやと出会う前のいつも通りの日常へと戻っていきます。
心配をかけた友人の芦花と真美に「連絡返せんくて、ごめん!」と謝る彩葉。それに対し、2人が「私たちはさ、彩葉が生きてればいいから」と返すシーンからは、2人がどれほど彩葉を案じていたかが伝わってきて心が温まりました。
おとぎ話のようなかぐやとの日々が終わり、彩葉に日常が戻ってきました。
これが、彩葉とかぐや姫の物語。
彩葉はかぐやと出会った例の電柱を眺めながら、「私、かぐやとの思い出を胸に前に進むよ!」と力強く決意。澄み渡る青空にかぐやの笑顔が映し出され、めでたしめでたし。
そして、スクリーンにエンドロールが流れました。
・・・
「――そんなふうに終われるわけ……ないっしょ!」
突如スクリーンに流れていたエンドロールが途切れ、彩葉が走り出します。
このエンドロールの演出ですが、Netflixバージョンでは『次の動画を再生』というUI画像が表示され、『ブラックオニキス』のライブ映像へ誘導するような演出になっており、映画版とはまた異なるので、ぜひ映画版とNetflix版、両方の演出を見比べてみてください!
そして、彩葉は走りながら「もっともっと彩葉と歌いたかったよ」というかぐやの言葉を思い出します。物語冒頭で「ハッピーエンドいらない。普通のエンドで結構です」と語っていた彩葉ですが、かぐやと一緒にハッピーエンドを迎えるため、キーボードを引っ張り出し、ワンコーラスだけでまだ未完成だった『Reply』の続きを作り始めます。
何日も机に向かい、ひたすら楽曲の制作に没頭する彩葉。以前、この未完成の楽曲は彩葉の内面そのものを現しているのではないかと考察しましたが、それを裏付けるシーンとして、彩葉が今までずっと避けてきた『母親』と向き合うシーンが描かれました。きっと彩葉はこの楽曲を完成させるには、自分自身と向き合わなければならないと考えたのではないでしょうか。彩葉は自分の想いをちゃんと母に伝え、そしてついに未完成だった『Reply』を完成させたのでした。
ベランダへと出た彩葉は、卒業ライブの前にかぐやから貰った腕輪を大切に握り締めます。
そしてかぐやと過ごした愛おしい日々を思い浮かべながら、夜空に浮かぶ月に向かって、ついに完成した『Reply』の続きを歌い届けます。
その時、彩葉の脳裏でかぐやとヤチヨの姿がふいに重なりました。
ヤチヨの正体
翌日。ヤチヨと連絡が取れず、<ツクヨミ>へとログインする彩葉。そこでふとヤチヨの相棒である『FUSHI』を発見し、ヤチヨの居場所を尋ねます。そしてFUSHIに案内されたのは、現実世界のとあるマンションの一室でした。
薄暗い部屋の中に恐る恐る立ち入り、そこで彩葉が目にしたのは仰々しいコンピューターに繋がれた『タケノコ』です。
「ここから入れ」とFUSHIに言われて<ツクヨミ>にログインすると、髪を下ろしこちらに背を向けて座るヤチヨの姿がありました。
その後ろ姿を見て、思わず「かぐや?」と呼びかける彩葉。そして、「ヤチヨは……かぐやなの?」と問いかけます。「変なこと言ってるのは分かってる。でも……」と真っ直ぐにヤチヨを見つめると、ヤチヨは少し微笑み、「今は昔」と語り始めました。
今は昔、月に帰ってバリバリ社畜してたかぐや姫のところに歌が届きました。そしてお仕事を爆速で片付け、引継ぎも完了。それでもう一度地球に行こうとしますが、地球の時間では大遅刻。しかし月の超テクノロジーで時を超えて、地球に向かうかぐや姫。でも、もう少しのところででっか〜い石に当たってしまい、やっとのことでたどり着いたのはざっと8000年も前の地球でした。壊れた船のわずかな力で同行していた『犬DOGE』だけが体を得ましたが、かぐやは魂だけの存在になってしまいます。
そして時が経ち、人々がインターネットを開発し、かぐやは初めて魂だけの自分が世界と関われる可能性を知りました。そして仮想世界<ツクヨミ>の歌姫として、再び彩葉と出会うことができたのです。
月見ヤチヨの正体は、8000年前にタイムスリップし、現代まで彩葉と再会するのを待ち続けた『かぐや』だったのです。
かぐやの8000年
<ツクヨミ>の街並みを見下ろしながら、「ここからの眺めが、ヤチヨは本当に大好きなの」と微笑むヤチヨ。そんなヤチヨに「どうして……ヤチヨはずっと笑っている?」と彩葉が問いかけます。「それがヤチヨだから」と答える彼女でしたが、やがて声を震わせながら「でも……ハッピーエンド連れてくって約束したのに。彩葉の歌を聞いて戻って来たのに。ごめん、ドジっちゃった。キラキラのかぐや姫は……もうおばあちゃんです」と弱々しい笑みを浮かべました。
そんな悲痛の表情に、彩葉は「かぐやは、そんな顔しなかったじゃん」と言います。
8000年の時を経てようやく巡り会えたにも関わらず、「もし知りたくなかったなら、忘れてもいいよ」と身を引こうとするヤチヨ。しかし彩葉はその言葉を遮るように、怒った様子で地団太を踏み、ドカッと座り込みました。そして「8000年、あったこと全部聞かせてよ。私、寝ないから」とヤチヨに告げるのでした。
ヤチヨは嬉々として2人で過ごしたアパートの部屋を再現し、座卓を挟んだ向かい側に座る彩葉に「じゃあまずは、縄文人と魚とった話から」と、8000年の間に起きた楽しかった思い出を次々と話し始めました。
夜が更け、ウトウトし始めた彩葉に「お休みなさいよ」と優しく声をかけるヤチヨ。しかし彩葉は自身の頬を引っ張りながら「今、江戸じゃん。まだまだ」と意地を張ります。
ところが、ヤチヨの方が寝る時間になってしまいました。そのまま眠ってしまったヤチヨに「ず〜っとケラケラ笑っちゃって。私みたいになっちゃったんだ」と微笑む彩葉。その笑顔の裏にある陰を見抜いたようにFUSHIに向き直り、「ヤチヨが隠してることあるよね?」と静かに尋ねます。「ヤチヨが言わなかったなら、それは……」と躊躇うFUSHIに対し、「私、かぐやの全部を見なくちゃ」と真っ直ぐに伝える彩葉。するとFUSHIは嬉しそうに笑い、「ヤチヨはさっき久しぶりに、本当に嬉しそうだったんだ」と言います。
そして、彩葉を彼女が隠していた8000年の『本当の記憶』へと誘うのでした。
FUSHIが映し出したかぐやの記憶の中で彩葉が目の当たりにしたのは、「助けて」とうずくまるかぐやの姿でした。永い孤独。そして途方もない時代を超え、数え切れないほどの出会いと別れを繰り返してきたかぐや。それは決して、先ほどヤチヨが語ったような『楽しい』ばかりの8000年ではありませんでした。
「バカだったなぁ。何で今まで気づかなかったんだろ……。私が、ヤチヨに」
かぐやがAIライバー・月見ヤチヨとして仮想世界<ツクヨミ>を作り、再び彩葉と巡り会うまでの永く険しい記憶のすべてを受け止めた彩葉は「そっか。だからヤチヨはいつもあんなに楽しそうに笑ってたんだ」と、ヤチヨの笑顔の『理由』に気付きます。
それは、8000年もの間ひたむきに願い続けた『もう一度、彩葉に会いたい』という想いが報われた、喜びの笑顔。そして、もう『かぐや』として彩葉に会うことが出来ないという『辛い心』を隠すための笑顔。
ヤチヨの笑顔には、その2つの理由があったのではないかと私は思いました。
8000年という永い記憶のすべてを受け止め、目を覚ました彩葉。
そこは夜空を反射する鏡のような湖の上でした。
心配そうに覗き込むヤチヨの声で起き上がった彩葉は、たまらず彼女を抱きしめます。
「私、成長したよ。お母さんとだって話せたし、かぐやがいなくたって十分ハッピーエンド。お話はもう……終わり」と、そう告げる彩葉でしたが、徐々に感情が込み上げて大粒の涙を流しました。そして真っ直ぐにヤチヨを見つめながら、「かぐやと、いたい」――心の奥底にあった本当の願いを伝えます。
彩葉の素直な想いに触れ、「もうこれで終わってもいいって思ってたのに」とヤチヨは涙を流しながら、『Reply』のフレーズを口ずさみました。
「この一瞬を最高のパーティーにしよう」
ヤチヨは、彩葉が月へ届けたこの歌を「いつも思い出してた」と話します。
彼女の孤独を支えたのは、彩葉の歌だったのです。
彩葉はヤチヨのデビュー曲である『Remember』のフレーズを口ずさみました。
「大切なメロディは流れてるよ あなたのハートに」
そして、「この曲で、生き残れた」と伝えます。
たった1人で生きていこうとしていた彩葉を支えたのはヤチヨ(かぐや)が届けた歌でした。同じメロディを持つこの2つの楽曲が、再び2人を巡り会わせたのです。
ふと、ヤチヨは彩葉の手に触れ、「触れたらあったかいかなって、いつも思うんだ。また、彩葉と一緒にパンケーキ食べたいなぁ」と寂しげな笑顔を浮かべ、涙を流しました。
魂だけの存在である彼女は、彩葉の温度も、思い出のパンケーキの味も感じられません。
そんなヤチヨの言葉に、彩葉は「分かった……まだなんだ」と、あることに気が付きました。
「このお話には、まだ続きがある」
そう話す彩葉は目を輝かせながら、「私、やりたいことができた」と伝えます。
そして「本当のハッピーエンドまで付き合ってよね」と、8000年越しの再会を果たした2人の物語は、新たな結末へと向かっていくのでした。
(結)あらすじ
あれから10年。大学を卒業し立派な研究者となった彩葉は、ついにかぐやのために『機械の体』を完成させました。その体にかぐやの魂が宿り、2人はついに再会を果たします。
そして、それからまた少しの時が経ち。現実と<ツクヨミ>の同時開催という、かつてない規模でかぐやの『復活ライブ』が幕を開けます。8000年という途方もない時を越え、ついに彩葉とかぐや、そしてヤチヨの3人は再び同じステージに立つのでした。
残酷な運命に抗い、自らの手で新たな未来をつくり出した彩葉。そうして、彩葉とかぐやの壮大な物語は『本当のハッピーエンド』という最高の結末を迎えたのでした。
本当のハッピーエンドへ
「本当のハッピーエンドまで付き合ってよね」
そんな希望に満ちた言葉を胸に、彩葉は自らの進路を文系から理系に変更し、かぐやとまたパンケーキを食べるため『研究者』への道を歩み始めます。
ここから流れるダイジェスト映像では、彩葉がヤチヨと共にライブをする姿や、進路変更にあたって母親と先生に卒業後の人生設計を真剣に説明する姿が描かれます。さらに、かつて避けていた母親との和解、仲良し3人組の卒業式、そして目標のために研究に没頭する姿など、彩葉が駆け抜けた『10年間』の軌跡が次々と映し出されました。
そして10年の歳月が過ぎ。白衣に身を包み、立派な研究者となった彩葉は「最後のブレイクスルーはもう目の前なのよ」と語ります。かぐやの体をつくるためには莫大な費用が必要であり、彩葉は「お兄ちゃん出資して! 損させないから!」と兄に頼み込みました。
かつては1人ですべてを抱え込み、誰にも「助けて」と言えなかった彼女が、こうして素直に周囲を頼れるようになった姿には大きな『成長』が感じられます。
さらに「休むも仕事!」と終業時間にしっかりと退勤していく姿も印象的で、もう過労で倒れてしまうような彩葉ではありませんでした。
「おはよ!」
そんな彩葉の声と共に目を覚ましたのは、『機械の体』に魂を宿したかぐやでした。
目覚めるなり「はっ、パンケーキ!」とヨダレを垂らすかぐやに、「味覚はもうちょいお待ちあれ」と笑いかける彩葉。「も~、1秒だって待てないのに~!」と無邪気に笑うその姿を見て、『そこにかぐやがいる』と実感したのか、彩葉は目に涙を溜めながら優しく微笑みました。
途方もない永い時を経て、かぐやは『かぐや』としてようやく彩葉との再会を果たしたのです。
それから、また少しの時が経ち――。
「今生に間に合った、かぐやの復活ライブ! 現実とツクヨミ同時開催で、ヤチヨと舞い踊ります!」と、東京ドームと仮想世界<ツクヨミ>を繋ぐ、かつてない規模のライブがついに幕を開けようとしていました。
舞台裏では、「久々すぎ~!」とはぎゃぐかぐやに対し、「8000年ぶり?」と優しく問いかける彩葉。そこに「ヤッチョは先週ぶり〜」とヤチヨが元気よく割り込み、リラックスした3人の微笑ましい会話が交わされます。
やがてステージが暗転し、ゆっくりと幕が開きます。
「せ~の!」
そして、息の合った掛け声と共に、彩葉とかぐや、そしてヤチヨの3人は観客の大歓声とまばゆい光に包まれたステージへと再び舞い上がるのでした。
ラストシーンでは、かぐやのアウターモノローグが静かに流れます。
「ねぇねぇ、このお話。ハッピーエンドだと思う? このあと、すぐけんか別れしたりして?」と悪戯っぽく話すかぐやの声。しかしそんな言葉とは裏腹に、映し出されたテーブルの上には、大成功を収めた復活ライブでの笑顔溢れる思い出の写真がたくさん飾られていました。そして、かぐやはスクリーン越しに語りかけます。
「まだまだ分かんないよね。あなたの物語もそうでしょう?」
彩葉とかぐや、2人の未来も、そしてこの物語を見届けた私たちの未来も、まだまだこれから続いていく。「ひとまず、このお話はここでおしまいね。タイトル? タイトルは〜」。
そんな、最高のハッピーエンドを迎えたこの物語のタイトルは――『超かぐや姫!』。
そして、ここでついに『本当のエンドロール』が流れます。
印象的なイントロで流れ始めた楽曲は、『ray(超かぐや姫! Version)』。この曲の歌詞が本作の世界観や、彩葉とかぐやが歩んできた軌跡と見事にリンクしており、最高の余韻に浸らせてくれました。
さらに、公式YouTubeチャンネルにて公開されている同曲のofficial MVでは、なんと本編の『その後』の彩葉やかぐやたちの姿が描かれています。本当に素晴らしい映像となっているので、本作鑑賞後にぜひ併せてチェックしてみてください!
【Official MV】ray 超かぐや姫!Version / かぐや (cv.夏吉ゆうこ)、月見ヤチヨ (cv.早見沙織) from #超かぐや姫 !
『ray(超かぐや姫! Version)』のアウトロの直後、次に『メルト CPK! Remix』が流れ始めます。また、エンドロールでは設定資料が映し出されるという演出も。
視覚で作品の裏側に触れ、聴覚で最高の音楽に包まれながら、エンドロールが終わる最後の最後まで全く目が離せませんでした。
そしてエンドロールが明けた後。
「8000年経っても、モフモフふかふかのパンケーキ、食べたくて〜。ジュルリ(ヨダレ)。あまりにも忘れられなくて〜」と、パンケーキに想いを馳せるヤチヨの声。そこへすかさず「蛇足ぅ~!」とツッコミを入れる彩葉。そして2人の楽しそうな笑い声に包まれながら、本作は幕を閉じるのでした。