劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折 レビュー【ネタバレあり／なし選べる】

【じゅじゅさんぽ】

まさかまさか！幕開けは『じゅじゅさんぽ』からでした！
『じゅじゅさんぽ』は、アニメ本編のエンディングで展開されているミニアニメです。
苛烈な本編とは打って変わり、キャラクターたちのゆる〜い日常が垣間見えるこのコーナー。
リアタイしている時は、このパートが楽しみで最後まで張りついて観ていました。
ミニアニメからしか得られない栄養ってありますよね。

今回の劇場版にも『じゅじゅさんぽ』（新規ミニアニメ）があるということを事前情報で知っていましたが、まさか冒頭でお目にかかれるとは！

高専時代の五条悟・夏油傑・家入硝子の3人が、映画館の劇場内で着席しているシーンから始まります。
唐突に、「映画が始まる前に摂取しておくと良いもの」のゆる〜い雑談がスタート。
「長い映画を観る前に、お餅を食べておくとトイレに行かなくなるらしい」といったネタですが、これは実際にネット上でも話題になりました。

こういったリアルでも話題になったものを取り入れてくるところが、呪術廻戦っぽくて良いですよね〜。
観ているこちらも、「そうそう、らしいね〜」なんて、心の中で相槌をうつくらいに引き込まれました。
このような演出をされると、作品と視聴者との距離が近しいものに思えて、より没入できます。掴みバッチリ！

そして、これから起こる出来事を知っているからこそ、のんびりとしたこの雰囲気が、より愛おしいものに思えました……！

【正論が歪んでいく過程】

「懐玉・玉折」では、夏油傑の本来の人間性が浮き彫りになります。

特に印象的だったのが、五条悟が「弱い奴等に気をつかうのは疲れるよホント」と漏らしたとき、夏油が「呪術は非術師を守るためにある」とまっすぐに諭すシーンです。
「俺、正論嫌いなんだよね」と五条に言い返され、喧嘩に発展しそうになりますが、夜蛾正道の登場によって鎮火します。
あの場面を初めて観たとき、「夏油って、こんなにも“正しくあろうとする人”だったのか」と意外に感じ、強く心を動かされました。

過去の夏油は、呪術を「人を救うための力」と信じて使っていました。五条や家入と過ごす姿も明るく、今の虎杖・伏黒・釘崎のような、仲の良いトリオの面影を感じさせます。

だからこそ、星漿体・天内理子の護衛任務の失敗をきっかけに、夏油の心が少しずつ壊れていく描写には、胸が締めつけられました……。

夏油が悪役になったのは、ただ悪に染まったのではなく、心が壊れてしまった成れの果てなのだと思うと、やりきれない気持ちになります。

理想を持っていたからこそ、現実とのギャップに心をすり減らしていく――。
その過程があまりにリアルで、ただの「闇堕ち」では済まされない重みがあります。

五条と夏油。本来なら二人で最強の呪術師となる未来もあったはず。
それなのに、ああいう形で決別し、そして『呪術廻戦0』で迎える最期を思うと、本当に切なくなります。

夏油の心が少しずつ歪んでいく過程を、映画館の大きなスクリーンで観ると、その重みが一層胸に響きました。
なかでも印象深いのが、夏油のシャワーシーン。
劇場内に響くリアルな流水音が、静かな空気に緊張感を生み出し、その中でふと漏れた「猿め」という一言。
その瞬間、夏油が本当に堕ちてしまったのだと、はっきりと突きつけられた気がしました。

【青春のエンディング】

単刀直入に申しますと、本作のエンディング、これを観るだけでもかなり価値があります！

劇場版用に描き下ろされた新規カットは「思い出の写真」。
この写真が、主題歌の「青のすみか アコースティックver.」を背景にエンドロールに流れていくのです。

最初の一枚は、五条と家入の高専卒業写真から。（確か）
当然ですが、そこに夏油の姿はありません……。
「卒業式」と書かれた立看板を前に、五条と家入の二人が写っています。しかし、その顔はなんとも言えない複雑な表情。
つまらなそうだったり、どこか哀しそうだったり。決して卒業を喜んでいる様な表情ではないのです。
きっと劇場内にいる人、私含めみんな同じ顔してたと思う……。

二枚目以降は、卒業以前に撮ったと思われる高専での写真が流れていきます。
どれも“楽しそう”な様子ではあるものの、夏油がいないというだけで、絵面はやはりもの哀しい。

本来ならいたはずなのに…と切ない気持ちで流れる写真を目で追っていたら、その何枚目か後から夏油の姿が……！
そこでようやく気づきました。これは遡っているのだと！（遅い！）

五条の隣に笑顔の夏油がいる。仲間たちに囲まれた夏油がいる……（号泣）

スクリーンに映し出される一枚一枚の写真には、彼らが生きた青春そのものが描かれていました。
学生らしい一面と彼らの笑顔が、あまりにも眩しいっ……。
こんなにもキラキラとした日常が存在していたという事実。五条・夏油ファンならたまらなく嬉しいですよね。公式、ありがとう。

そうして、青い春が遡っていき、最後の一枚は、五条・夏油・家入3人の入学式の写真で終わるのです。

本作が重い内容だからこそ、この演出に救われる思いがありました。
劇場版仕様のエンディング。これを観にいくだけでも大きな価値がありますよ！