無限城
今作の舞台は、炭治郎たちが突如落とされた異空間「無限城」。
上弦の肆・鳴女の血鬼術によって創り出されたこの空間は、鬼舞辻無惨が“地獄”と称するにふさわしい、異様で不気味な構造をしています。
上下左右がめちゃくちゃに入り組んだ迷宮のような造りに、炭治郎たちは翻弄されることに。
この無限城、実は「柱稽古編」のラストで初登場した際、その美しさと迫力ある作画が大きな話題を呼びました。
そして今回、劇場の大スクリーンで描かれる無限城はさらに圧巻!
まるで自分がその空間に引き込まれたかのような臨場感で、ただただ圧倒されました。
あれだけ複雑な構造でありながら、視覚的な混乱を感じさせずに描き切る映像表現の技術には、本当に驚かされます。
落下する炭治郎たちが、技を繰り出しながら体勢を整えて着地するシーンも必見。
柱たちや、覚悟を決めた善逸の鋭い表情も相まって、落下中からすでにカッコよさが全開です。
そして、着地とほぼ同時に現れる下弦クラスの力を持つ鬼たち。
そこから始まる柱たちの戦闘シーンは、まさに圧巻。
華麗さと力強さを兼ね備えたアクションに、思わず目が釘付けになります。
そして『鬼滅の刃』といえば、やはり「◯◯の呼吸 ◯ノ型!」の決めセリフ。
あのひと言を聞くだけで、「ついに鬼滅が始まった!」とテンションが一気に上がり、これからの展開にワクワクが止まりません。
原作をすでに読んで結末を知っていても、映像でしか味わえない演出や迫力のあるアクションが楽しめるのが『鬼滅』の魅力です。
無限城の美しさや臨場感は、テレビやPCの画面でも十分に伝わると思いますが、やはり劇場で観る価値は圧倒的。
スクリーンだからこそ体感できるスケールと迫力を、ぜひ味わってほしいです!
胡蝶しのぶVS童磨
原作を読んで展開は分かっていたけれど、それでもやっぱりつらいのが――胡蝶しのぶの死。
文字通り、無限に広がる城内で胡蝶しのぶが出会ったのは、姉・カナエの仇である上弦の弐・童磨。
この戦いでは、カナエの最期が描かれ、そのシーンだけでも胸が締め付けられます。
体格的に鬼の頸を斬れないしのぶは、毒を使って戦うスタイル。
そんな彼女が柱にまでなったのは、姉・カナエの死があったからこそ。
目の前に仇が現れ、怒りをこらえきれなくなるしのぶを見ていると、こちらまで苦しくなりました。
普段は鬼への怒りも笑顔で包み隠しているしのぶ。
そんな彼女が、怒りをあらわにした時の表情はとても切なく、見ていられないほど。
感情をむき出しにして戦う姿は美しくもあり、同時に涙を誘うものでした。
そして何より、戦闘シーンの演出が本当にすごいんです。
「蟲の呼吸」を繰り出すしのぶの動きや、童磨の血鬼術の美しさ――
とくに氷を使った技「蓮葉氷」は、敵ながら思わず見惚れてしまうほど。
蓮の花が氷で描かれた演出に「うわ……」と息を呑みました。
毎回映画レベルと言われるアニメの演出を、劇場版ではそれをさらに超えてきた感じ。
「鬼滅クオリティ、やば……!」と圧倒されました。
戦闘終盤、童磨に斬られて立てなくなるしのぶ。
それでも、カナエの幻と会話を交わしたあと、最後の力を振り絞って童磨の喉元へと突き進む姿には、思わず涙が込み上げました。
鎖骨も肺も肋骨も斬られて、それでも生きているのが不思議なくらいの状態。
そんな中で放たれる、童磨への渾身のひと突き。
結局、しのぶの毒は童磨に分解されてしまい、効きません。
そのとき、しのぶの心の中で「なんで毒が効かないのよ」「ふざけるな馬鹿」「馬鹿野郎……」と、語彙が崩れていく描写が、あまりにも切なくて……。
強くて優しくて、ずっと感情を抑えてきた彼女が、あんなふうに心を乱されてしまう――その姿が忘れられません。
今作では、童磨にしのぶが“吸収”されるという、あまりにも衝撃的なシーンまで描かれました。
そしてその場に、カナヲが駆けつける――。
しのぶが吸収される瞬間、カナヲが「うああああ!」と叫びながら童磨に斬りかかる姿……。もう本当に胸が痛かったです。
カナヲって、元は言葉を発することすらできなかった少女なんです。
心を閉ざして、すべてをコインに委ねてきた彼女が、少しずつ人のぬくもりを知り、感情を学んできた。
でも、今回のように感情を爆発させる姿は、あまりにも切なくて、苦しくて……。
おそらく第二章では、カナヲと童磨の戦いが描かれるはず。
とても重くて苦しい展開だけど、それでもやっぱり楽しみにしてしまいます。
我妻善逸VS獪岳
善逸って、普段はちょっと情けない感じなのに、戦闘になると急にカッコよくなるじゃないですか。
中でも唯一使える「雷の呼吸・壱ノ型 霹靂一閃」は、善逸の魅力がギュッと詰まった技。アニメスタッフも、きっと善逸の戦闘シーンには特に力を入れていると思います。それくらい、アニメ放送でも、劇場版・無限列車編でも、善逸のアクションはいつもかっこよく描かれてきました。
そんなギャップがたまらない善逸ですが、今作ではずっと“かっこいい善逸”のまま。
無限城に落とされていく最中から、覚悟を決めたような鋭い表情で、キレッキレの動きを見せてくれます。戦闘モードの善逸、最高にカッコよかったです。
なぜ善逸が覚悟を決めた顔をしていたのか——その理由は、兄弟子・獪岳が鬼になっていたという衝撃の展開。
アニメ放送時にも、獪岳の姿がチラッとだけ映っていましたが、私は彼の登場を密かに楽しみにしていました。
というのも、声を担当しているのが細谷佳正さんで、そこも個人的注目ポイント。『鬼滅の刃』は本当に声優陣が豪華で、演技の熱量がすごいんですよね。
そしてついに訪れた「我妻善逸 vs 獪岳」の戦い。
雷の呼吸・壱ノ型“しか”使えない善逸と、雷の呼吸・壱ノ型“だけ”使えない獪岳の激突——この対比、切なすぎませんか……。
本来は人を守るための技なのに、鬼になった獪岳はその技を人を殺すために使う。
しかも、獪岳が鬼になったことで、善逸の「爺ちゃん」と呼んで慕っていた師匠は、介錯も付けずに自ら腹を切り、長い間苦しんで命を絶ったのです。
そのことを涙ながらに訴える善逸の姿には、こちらも思わず泣いてしまいました。
戦いの中で思い出す、兄弟子との修行の日々。獪岳のことが嫌いだったし、自分も嫌われていたけれど、それでも兄弟子として尊敬していた。善逸の心の声が、静かに、でも強く響いてきます。
そして、自ら編み出した「雷の呼吸・漆ノ型 火雷神」で、ついに獪岳の頸を斬る善逸。
「この技で、いつかアンタと肩を並べて戦いたかった」
そう呟きながら落下していく善逸の姿が、あまりにも切なくて涙が止まりませんでした。
そこに現れた愈史郎も、いい仕事をしていました……!
「欲しがるばかりの奴は、結局何も持っていないのと同じ」——この言葉、ものすごく深いですよね。
愈史郎に引き上げられた善逸の先には、村田さんをはじめとする隊士たちの姿が。
中でも、善逸を気遣う村田さんのシーンはグッときました。
善逸のことを「顔見知り」って言ってるのに、「頼むからな!」と愈史郎に必死に託す姿……村田さん、ほんとにいい人すぎる(涙)。
しかも、無限城にいる鬼たちは下弦クラスの強さがあるはず(悲鳴嶼さん談)。
そんな強敵に、村田さんたちが互角に戦ってるなんて……みんな本当に強くなったなぁって、胸が熱くなりました。
その頃、愈史郎に助けられた善逸は夢を見ています。
おそらく三途の川のような場所。川の向こうには腹を切って亡くなった爺ちゃんの姿が、こちら側には善逸。
「獪岳と仲良くできなくてごめん」「恩返しできなくてごめん」「嫌いになった?」
泣きながら謝る善逸を見て、どれほど師匠を慕っていたかが痛いほど伝わってきます。
そんな善逸に、爺ちゃんがかけた言葉は——
「お前は儂の誇りじゃ」
もうこのシーンで、涙腺が完全に崩壊しました。
善逸がこんなにも苦しんで、こんなにも強くなったんだと胸がいっぱいになりました。
炭治郎&冨岡義勇VS猗窩座
どこから話そうか……まずね、冨岡義勇がかっこいい。それに尽きます。
原作でもアニメでも大人気の冨岡義勇。
公式人気投票では第1回が4位、第2回が2位で、柱枠では常にトップ。そりゃ人気出るわけだ、顔がいいし、強いし、静かに魅せるタイプ。
今作では炭治郎と共に行動し、息ぴったりに戦っています。
炭治郎の動きから技を読み取り、自分はかぶらないよう別の技を出す。しれっとそんな連携できるの、さすが兄弟子。そして柱、すごい。
冨岡の魅力といえば、感情をあまり表に出さないところ。無表情で超絶技巧を繰り出し、たまに見せる微妙な表情の変化が刺さるんです。
そんな彼が無限城を進んでいく中、ついに猗窩座が再来!
猗窩座の登場って、敵ながらワクワクしちゃうんですよね。
武器を使わず拳と脚で戦うスタイル、そして「術式展開」で広がる雪の結晶のような陣。美しすぎて見惚れるほど。無限列車のときも最高でした。
そして、炭治郎の成長がすごい。
最初は妹・禰󠄀豆子のために頭を下げていた少年が、今や上弦の参と“対等に戦う”レベルに。冨岡も驚くほどの進化ぶりで、見ているこちらとしても胸アツ。
ジャンプ主人公の王道を行く成長曲線、やっぱり燃えます。
ついに炭治郎は「透き通る世界」が見えるように。
土壇場で父の教えを思い出す演出も良いんですよ……。父・炭十郎の演舞シーン、渋くてかっこよかった!
今作の見どころのひとつ、やっぱり猗窩座。
頸を斬られても再生する執念、強さへの執着が際立ちます。
そんな猗窩座に向かって、義勇が言い放つ——
「炭治郎を殺したければ、まず俺を倒せ…!」
ここで冨岡の不屈の精神と感情があらわになって、グッとくる。
そして、この冨岡の姿に影響を受けてか、猗窩座の“記憶”が少しずつ蘇っていきます。
謎の美少女に「もう、やめましょう」と諭される猗窩座。「どうして強くなりたいのか」問いかけられます。
「強くなければ持って帰れない」「親父に、薬を…」
これが猗窩座のアンサー。この倒置法のセリフが胸に刺さって泣ける泣ける……。
人間だった頃の猗窩座=狛治の過去がここから描かれていくのですが……これは別パートでじっくり。
記憶を思い出し、「よくも思い出させたな」と義勇に襲いかかる猗窩座。
炭治郎が気絶から目覚めて義勇を守ろうとするけれど、力が入らず刀がすっぽ抜けてしまいます。
その代わりに拳で猗窩座を殴ると、狛治がかつて師範から受けた拳と重なり、記憶の奥に届く……。
そして猗窩座は、自らを殴り、自らを終わらせるという選択をします。
その時の笑顔が……劇場で観て本当に良かったと思えるほど美しい。
炭治郎曰く「感謝の匂い」がした、というセリフも印象的でした。
「もういい、やめろ、再生するな、潔く地獄に行きたい」と願いながらも、鬼舞辻無惨の幻影に惑わされかけ、体の再生が止まりません。
でも最後は恋雪の幻影が現れ、ついに体の崩壊が始まります。
「守れなくてごめん」と泣いて何度も謝る狛治。
恋雪と狛治、2人の姿を鮮やかな色彩が包むシーンは、涙なしでは観られません。
映像美・感情・音楽すべてが完璧で、間違いなく今作の“必見シーン”です。
「猗窩座再来」……劇場で観てよかった。そう深く思える一作でした。
狛治
ただでさえ見どころが多い『鬼滅の刃』ですが、その大きな魅力の一つは「鬼側にも背景がある」というところ。
敵でありながら、人間だった頃の苦しみや想いが丁寧に描かれていて、ただの悪役では終わらない…そこが心に刺さるんですよね。
今回の無限城編で描かれた、猗窩座の過去――人間・狛治としての物語も、本当に涙腺を刺激されました。
狛治は幼い頃から、病気の父のために薬代を得ようと窃盗を繰り返す少年でした。もちろん、盗みはダメなこと。でも、その理由が「父を助けたいから」って……もう、この時点で胸がギュッとなります。
それでも、狛治の父は「人様から金品を奪ってまで生き永らえたくない」と、自ら命を絶ってしまいます。
残された遺書には「真っ当に生きろ。まだやり直せる」と――この言葉がまた重い。
「骨を折られても、鞭で打たれても、親父のためなら何百年でも耐えられる」
そんなふうに心の中で語る狛治に、涙が止まりませんでした。
正直、「いやいや、どんだけ親父好きなんだよ!」ってツッコミも入れたくなるけど、それだけ優しさと覚悟を持った少年だったんですよね。
父の死後、荒れた生活をしていた狛治は、武術道場「素流」の師範・慶蔵とその娘・恋雪に出会います。この出会いが、彼の人生を大きく変えるんです。
ちなみに、猗窩座の術式に使われている雪の結晶のモチーフは、恋雪の髪飾りから来ているそうです(原作の設定こぼれ話より)。
この事実を思い出すだけで、また涙が……。
さらに、猗窩座が着ている上着にも、恋雪への思いが表れているという説があります。
公式情報ではありませんが、羽織の背中の模様がポイント。一見すると体の入れ墨と同じに見えますが、実は違っていて――
これは香道で使われる「孤峯の雪(こほうのゆき)」という模様を逆さにしたものなのだとか。
まるで、亡くなった恋雪を背負って生きているようで……この説を知ったとき、さらに涙腺が崩壊しました。
それはさておき。
病弱な恋雪の看病を献身的に続ける狛治の姿も印象的でした。
特に、恋雪に「気分転換に花火でも行ってきて」と言われたときの狛治の返しが最高なんです。
「眩暈が治っていたら、背負って橋の手前まで行きましょう」
「今日行けなくても、来年、再来年行けばいいですよ」
――こんな優しいセリフ……。恋雪、惚れるしかないでしょうよ。
そして三年後、ついに狛治と恋雪は祝言を挙げることに。幸せの絶頂…だったはずなのに。
狛治が父の墓参りに行っている間に、なんと慶蔵と恋雪が毒殺されてしまいます。
この展開、あまりにも残酷すぎませんか……。
怒りに震えた狛治は、素手で隣の剣術道場の人間67名を殺害。人間時代から、どれだけ強かったんだよ……と同時に、すでに壊れてしまった彼の心がつらい。
そこに現れた鬼舞辻無惨。問答無用で狛治に血を流し込み、鬼へと変えてしまいます。
「もう、どうでもいい……」
そんな言葉を口にする狛治に、こちらの心まで折れそうになりました。
――11歳の頃にはすでに窃盗に手を染め、父を失い、ようやく出会えた大切な人たちとの未来も奪われて。
なんて悲しい人生なんでしょう。
でも最後、炭治郎や義勇との戦いの中で、人としての記憶を取り戻せたこと。
猗窩座ではなく、「狛治」に戻れたことが、唯一の救いだったのかもしれません。
「来世では、幸せになってほしい」
そう願わずにはいられない、切なくて、美しいエピソードでした。
感想まとめ
バスタオル必須って本当だった……!
泣けるシーンが多くて、気づいたら何度も涙腺崩壊。劇場内でも鼻をすする音があちこちから聞こえてました。
戦闘シーンは迫力満点で、炭治郎や善逸はもちろん、「やっぱり柱はカッコいい…!」と再確認。
LiSAの「残酷な夜明けに」と、Aimerの「太陽が昇らない世界」も、鬼滅らしさ全開で作品の世界観にぴったりの楽曲でした。
“鬼にも理由がある”っていう鬼滅らしさが詰まった、見応えたっぷりの第一章。
これは続編も期待しかないですね!