栞子
舞台は京都から始まります。
着物を着たニジガクの面々がそれっぽいエモエモモノローグを語りながら神社を参拝するシーンが描かれます。
水着から始まった第1章の解放的なシーンに比べ、第2章は和を重んじた静かな雰囲気で「前作とは別物を描いてやるぞ」という製作陣の意気込みが伝わってくるようです。
しかしこれはスクールアイドルの物語。油断しているところに、舌をペロっと出す果林さんのサービスカットが突如差し込まれます。冒頭からセクシーとキュートの両刀を構えた3年生に胸を貫かれてしまいました。果たして自分の体力は持つのでしょうか。
参拝を終えた一同は沖縄から配信されたしずくのライブを視聴します。
しずくが披露したのは1章の冒頭でしたから、時系列はその直後なのでしょう。
しずくを称賛する中、栞子も負けじとその場でライブを披露します。
曲名は『いとしき夢よ いざないて』
日本舞踊を得意とする栞子に相応しい和風な一曲です。
MVで鳳凰の羽が栞となって本に挟まっている描写が良かったです。
籠の中の『翠いカナリア』だった栞子は自由に羽ばたく鳳凰になったのね……。
もしかすると映像の鳳凰は、京都が舞台という事で平等院鳳凰堂を意識した演出なのかもしれません。
また鳳凰には人の性格を見極め祝福する逸話があるそうなので、人の適性を見抜く栞子と重ねたという解釈も面白そうです。
このライブで栞子のランキングは6位に跳ね上がりました。1年前に第1章を観た時はいきなり上位にいる栞子に何事かと驚きましたが、こんな経緯があったんですね。こういう伏線回収は熱い。
ミアと璃奈
そんな中、ミアは姉のクロエと再会します。
ミアのスクールアイドル活動に興味を示し、今回のグランプリのアンバサダーを務める事になった経緯が説明されますが、そんな事よりクロエのビジュと雰囲気が中々好みで予想外の感動を味わえました。
あとロリータを着せられて羞恥するミアが可愛かったです。
テイラー家の重圧に苦しんでいたミアは、クロエの前では強く出られない様子。
そんなミアを元気づけようと、全員で大阪観光を始めます。
石像の真似をする璃奈や、たこ焼きに苦戦するミアが何とも愛おしくてずっとニヤニヤしてました。自分は大阪在住なので、見覚えのある景色にニジガクのみんながいるのも大興奮でした。
以前友人と出かけた姫路のアニメイトが映ったのも嬉しかったです。
そのアニメイトではせつ菜が好きなアニメを早口で語りまくる様子が描かれます。
すると話を聞いていた愛さんがその場で円盤の購入を決めてしまいました。
せっつーの好きなアニメなら愛さんも見てみたい、と。
もう1周回って恐ろしいです。
何故、こんなにも優しいんでしょう。
何故、こんなにもオタクの喜ぶ事ができるのでしょう。
何故、自分はこんなにも胸が震えているのでしょう。
この理由を突き詰めると世に出してはいけない文章が出来上がる気がするので割愛します。
確かなのは、愛さんは地上に舞い降りた女神だという事です。
そんなこんなでみんなに励まされライブを行おうとするミアでしたが、聴衆に紛れたクロエを発見し思わず中断してしまいます。
ファンのみんなと楽しむ場が、幼少期に体験したトラウマに塗り替えられてしまうのが気の毒ですね。
本音を話せないミアに代わって、璃奈がミアの苦悩をクロエに伝えます。
ここはグッときました。
クラスメイトに話しかける事すらできなかった璃奈が、今では誰かの気持ちを繋げるために立ち上がれる。気持ちを伝える事の難しさを知っている璃奈だからこそ、ミアの悩みに寄り添えたのでしょう。
事情を知ったクロエはミアをアメリカに連れ帰ろうとします。
歌手になりたいならテイラー家がサポートすればいい。いつか終わりの来るスクールアイドルを続けるよりそっちの方がいい、と。
ここのやり取りで、「いよいよ虹ヶ咲もスクールアイドルの宿命と向き合うのか……」と胸がソワソワしました。
スクールアイドルに終わりは避けられませんからね。
この終わりに向かっていく過程こそ『ラブライブ!』で最も味の出る瞬間だと思います。
ミアとの別れを突きつけられ、ふさぎ込む一同。
その中で璃奈はクロエの意見を肯定し、別れを受け入れます。
ミアの背中を押す事が正しい。ミアの夢を叶える事が大切だと。
そう必死に自分に言い聞かせている感じが辛かったです。自分の発言がきっかけでミアとの別れが確定したので、正しいと思い込もうとしているのでしょう。
この後どうなるのかと思いきや、なんと璃奈は謎のマスクを被ってドローンを操作し、スクールアイドル『A.L.A.N(アラン)』としてグランプリに乱入してしまいました。
ど、どないしたんや……。
予告映像を見た時はあまりのキャラ変に笑いが込み上げてきましたが、本編での経緯を踏まえると困惑と心配が勝ります。
街頭の大型ビジョンには『A.L.A.N』の曲『Cheer Mode』が流れ、街中で話題になります。
格好良くて最高なんだけど、どこか璃奈らしくありません。
ニジガクのみんなも同様のリアクション。
梅田スカイビルの屋上で璃奈と対面したミアは、『Cheer Mode』がミアの背中を押すために生まれた曲だと聞かされます。
自分のために作られた曲。
ならば何故こんなにも胸が苦しくなるのか。
ミアは自分の本当の気持ちに気づきます。
本当はみんなと離れたくなかったんだと。
ここでいつものクールな表情から、年相応の少女らしさに変わっていくのがドキッとしました。
一方の璃奈も、心の底ではミアと別れたくないと思っていました。
そんな本音があったから『A.L.A.N』の歌はミアに違和感を与えていたんですね。
そこに気づいたミアは、璃奈の新ボードを外してあげます。
璃奈のボードは気持ちを隠すものじゃない。気持ちを伝えるものだろう、と。
その言葉を受けて、なんと璃奈の口元には微かな笑みが……!
わ、笑ってる!!璃奈ちゃんが笑ってる!!!
衝撃でした。何故表情を出すのが苦手だった彼女がこの瞬間に笑えたのか。解釈を深めると面白いものが見えてきそうです。
また、この一連のやり取りで披露された2人の新曲『Stay』と『Like a Treasure』も素晴らしかったです。
『Stay』は珍しく璃奈が素顔のままライブを披露してくれたのがポイント。映像の中でもハッキリ微笑んでいたのが印象的でした。
『Like a Treasure』はタキシードでキメたミアが、静かな曲調で怒涛の英語ラッシュを叩き込んでくれます。
この曲に限らず、ミアの発音は聞き取りやすくて気持ちいいです。アニソンというより普通に洋楽として楽しんでいる自分がいます。
何より2人が互いのMVに出演し合っていたのが驚きでした。他のメンバーの登場は以前にもありましたが、明確に2人の関係に焦点を当てた映像は珍しいのではないでしょうか。
不具合
璃奈とのやり取りで答えを見つけ、クロエに自分の意志を伝えられたミア。
一方、ファンの間では璃奈扮する『A.L.A.N』のせいでアプリが不具合を起こしたのではないかと話題になっていました。
アプリの異変は『A.L.A.N』登場より以前に発生していたので、彼女のせいではないとわかってはいるのですが、ここはハラハラしました。
何故なら璃奈は他人に誤解されるのを何より恐れている子だからです。
それが原因でライブをドタキャンしようとするエピソードまであったくらいなので、新しい一歩を踏み出した舞台で叩かれるのを想像すると胸が痛くなります。
一応、運営からの発表で誤解は解けたようなので安心しました。
何なら璃奈は『A.L.A.N』のお披露目ついでにサーバーにアクセスし、不具合を改善しようと努めていたようです。
お、おう……。
ミアとの別れに堪えながら片手間にハッキングて……。璃奈ちゃんチートすぎますね。
そんな経緯で璃奈が修復しようとしたアプリですが、残念ながら改善の目処は立たず、グランプリの中止が発表されてしまいます。
阿鼻叫喚の声を上げるスクールアイドル達。
スクフェス時代に見かけた転入生・黒羽姉妹がかなり目立っていて面白かったです。
何気にグランプリ中止への不満をニジガクに言わせていない所から脚本の細かい配慮が感じられます。
そんな中、1人落ち込む愛さんに栞子が話しかけます。
愛さんと私は似ているので悩みがわかる、と。
栞子も愛さんも、自分主体でなく他人のために行動できる人間だという共通点が語られます。
自分と他人の適性を常に見抜いている栞子だからこそ気付けた事ですね。
この2人が似ているという着眼点は今まで触れた事がなかったので意外でした。
言われてみれば確かに……と思う反面、自分の事以上に誰かのために行動できるキャラって他にも割といるなあ……と感じました。
そもそもアイドル自体、応援してくれる他人がいて初めて成り立つ存在なので、その成長を描いていく上で他人に尽くすキャラが増えていくのは自然だろうなあと。
この例で言えば、特にエマとか栞子に似ている気がします。スクールアイドルではありませんが侑も同様です。
何なら栞子ってOVAのゲストキャラにも自分を重ねていたので、もうそういう性格なのかもしれません。
もしかしたら私も栞子と似ているかも(知らんけど)。
愛さんとせつ菜
そんな栞子からせつ菜が落ち込んでいる事を教えられた愛さんは、彼女のもとに駆けつけます。
せつ菜は今回のグランプリで、スクールアイドルの宿命に苦悩している様子でした。
スクールアイドルが終わると、優木せつ菜はいなくなる。ただの中川菜々に戻ったらどうなってしまうのかと。
優木せつ菜は自分の思い描く理想のスクールアイドルで、菜々とは違うという認識のようでした。
この辺りは少ししずくと似ていると感じました。
彼女も理想のスクールアイドルを演じながら活動していて、素の自分とのギャップに苦しんでいましたから。
ただし『理想』の意味合いが2人の間で異なる気がします。
せつ菜の『理想』は、本当の自分。家庭の事情で常に優等生でいなくてはならない彼女だからこそ、スクールアイドルでいる時だけはアニメやゲームが大好きな『本当の自分』を曝け出せる。
対するしずくの『理想』は、偽りの自分。
本当の自分を出すのに怯えていたからこそ、そうではない理想の誰かを演じていた。
同じ『理想』でもその在り方は全く違う。
似て非なる存在、という感じですね。
まあしずくに関してはスクスタの頃と価値観が真逆なので解釈が難しいところではありますが、アニメ版は概ねこんな感じだろうと思います。
いつかこの2人の関係を掘り下げる話があれば見てみたいです。
話が脱線したので戻します。
せつ菜と合流した愛さんは、以前アニメイトで買った円盤を一緒に視聴します。
優木せつ菜という名前の由来となったヒーローの物語。だけど愛さんにとってのヒーローは、他ならぬ優木せつ菜なのだと語られました。
愛さんがスクールアイドルを始めたきっかけは、せつ菜の『DIVE』を観たから。
そこからずっと成長していくせつ菜を見てきたんだと。
ここめっちゃ驚きました。
実はこの映画を観る前、1期の愛さん回を見返していて、ちょうど自分も愛さんとせつ菜の繋がりを思い出していたタイミングだったので。
ここを掘り下げるんだ〜〜!!と、心の中で叫んでいました。
そして愛さんはせつ菜の手を取り、静かに語ります。
「優木せつ菜がいなくなるなんて言わないで。せつ菜はもう君の中にいて、スクールアイドルが終わった後も誰かに勇気を与えていくんだから」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
1周目なので一言一句覚えている訳ではないですが、こんな風なニュアンスだったと思います。
ここはマジでヤバかった。
虹ヶ咲はスクールアイドルの終わりに向き合う展開があまりなかったので、ちゃんと描いてくれるのか少し不安でしたが、ここでハッキリ答えを言ってくれました。
虹ヶ咲全体でなく、あくまで愛さんとせつ菜のやり取りに留まっていますが、それもまた各々の道を進む虹ヶ咲っぽくて良いでしょう。
避けられない宿命に向き合い、苦悩し受け入れる。
この過程があるから自分は『ラブライブ!』シリーズが大好きです。
どんなに頑張っても引退のタイミングが平等に決まっているなんてあまりに残酷でしょう。
それでもやり遂げて良かったと思えるのがスクールアイドルの魅力、そして青春の素晴らしさだと思います。
何気に愛さんが『君』という二人称で話していたのも良かったです。
基本的に親しくなった相手をあだ名で呼ぶ愛さんですが、スクスタの頃はあなたちゃんに対してずっと『君』と呼び続けていました。
だから愛さんにとっての『君』には特別な意味が込められている気がして、それをせつ菜に向けているのがどれだけ重要な事なのかと、胸の奥で噛み締めている次第です。
愛さんの言葉を受けて、せつ菜は自分達の力でグランプリの続きを始めようと動き出します。
ニジガクのみんなはもちろん、他の学校のスクールアイドル達も協力して街中の大型ビジョンにライブ映像を映し出します。
この展開は自分達でスクールアイドルフェスティバルを開催した虹ヶ咲だからこそで胸が熱くなりました。
トップバッターはせつ菜と愛さん。
ベタですが、お互い決め台詞を交換していたのが好きです。
しかもここで披露された2人の新曲も最高に良かった。
せつ菜は『Burn!!』、愛さんは『Circle of Love』。
リズムやテンポの良さもありますが、何よりお互いの声を交換してコーラスとして登場させたのが鳥肌全開でした。
璃奈とミア同様、2人の組み合わせに焦点を当てたMVです。
何となく『Circle of Love』の方は愛さんが少し大人びていて、卒業後の姿を描いているのかなと思いました。映像のせつ菜と愛さんがギターを弾いているのは、もうスクールアイドルではなくなったけど歌い続ける2人の未来を示唆しているのではないかと。
スクールアイドルの終わりについて答えを出した直後なので、少しありそうだなと思いました。
その後、愛さん達のライブのおかげでグランプリ運営がもう1度アプリ改善に向けて立ち上がる事に。
最後の舞台は虹ヶ咲学園のある東京。
多くのスクールアイドル達の努力が報われ、グランプリは無事ファイナルラウンドを迎える事が叶いました。
ここまでメチャクチャ面白かったのですが、最後のグランプリ復活だけ少し気になりました。
アプリのテストを兼ねているとは言え、沖縄や関西(大坂、京都、神戸)を巻き込んだ大規模なグランプリが中止となったのは、気持ち1つではどうにもならない障害が立ち塞がっていたからだと思います。
それがスクールアイドルのライブ1つで覆ってしまうものなのでしょうか。
もちろん物語上そうすべきだし、この展開自体は好きです。
でも具体的にスクールアイドルの何がどう運営を動かしたのか、少しでも説明が欲しかったなと思いました。
例えば大スターのクロエが愛さん達のライブを紹介した事で、事情を知った世界中が感動し、多くの専門家達が協力を申し出てくれた。
本来借りられるはずのなかった助けが入った事で復活の目処が立った……など。
これならクロエがアンバサダーとしての役割を果たした事になるし、愛さん達の頑張りが報われたと納得できます。
もしかすると2周目3周目と見ればこの辺りの疑問も晴れるかもしれませんが。
ともあれ、この作品が最高に面白かった事に変わりはありません。
何度も見返したくなるくらいニジガク愛に溢れた一作でした!
果林さん
今回ライブのなかった果林でしたが、彼女の入浴シーンはかなり印象に残りました。
別にやましい感情がある訳ではありません。
このシーンは果林とクロエ、大人な2人が互いに探りを入れるシリアスな場面です。
「永遠に続くのが家族だけとは限らない」
クロエに対して、そうハッキリ言い放つ果林が格好良かったです。クロエに指摘された際、ニジガクの誰も反論できませんでしたから。
それをみんなのいない場で伝え、さりげなくミアとクロエの仲を繋げようとする。
地味ですが、頼りになる先輩感が伝わってきました。
次回のライブが楽しみです。